潰したいもの護りたいもの
しかし、リュクレーヌは余裕綽々でソファに腰掛ける。
「けどアドミラさん。おかげで一つ分かった事があるぜ」
「何?」
「あぁ、あのゴーレムたちは真っ黒な存在だってこった。アマラ叩きの世間の追い風をつかって、軍を崩壊まで導くために存在していたんだ」
「一体何のためにそんなことを」
「決まってんだろ。アイツらみんなマスカなんだよ。マスカは人間を殺すための機械だ。敵であるアマラは潰したいだろ」
ゴーレムはマスカである。今は人間を護っているが、これが作戦でありいずれ牙を剝くとしたら。
対抗勢力であるアマラの芽は摘んでおく。
だとしたら、事実を湾曲してフランを──アマラを悪者にしてゴーレムとの戦いをけしかけた新聞社も一気に黒くなった。
「なるほど……だが、その証拠は」
しかし、決定的な証拠はない。ゴーレムもテレーノ教もネオン新聞社も確実にマスカ──ファントム側についているという証拠だ。
テレーノ教の内部に侵入しない限り教祖であるミーナには会えないだろう。証拠は掴めそうにもない。
「証拠は潜入捜査で掴む」
「え?潜入捜査はやらないって」
「あぁ、信者としての潜入はしない。この意味、分かるか?」
「……あっ!もしかしてゴーレムとして潜入する?」
「そうだ。幸いゴーレムはペストマスクで顔を隠している。躰を人形みたいにうまい事メイクすれば、まぁ、何とかなるだろ」
先の戦闘で二人の顔はとっくに割れている。
信者としての潜入は絶対に不可能。しかし、ゴーレムとしてならペストマスクで顔も隠すことが出来る。
「メイクかぁ……クレアに手伝ってもらおうか?」
「そうだな、でもこの状況じゃ……」
アマラ軍はゴーレムに襲われている。この状況下でクレアに頼み事などできるものかと思ったが。
「クレアはアマラ軍を辞めた」
「クレアが!?もしかして、この間の……」
石を投げられた件か?とフランは思った。
「いや、辞めたのは軍だけだ。アマラそのものは続ける……君のようにフリーのアマラになったのだ」
「どうして……」
「彼女は言っていたよ。守りたいものを誰かに邪魔されるくらいなら、所属や地位だけ捨てて自由に誰かを守りたい。とな」
守りたい物を守る。選ぶ権利が与えられないのなら。意思が尊重されないくらいなら自由になりたいとクレアはアマラ軍を辞めた。
「反対、しなかったんですか?」
「……あの子には随分と不自由な生活を強いていたからな。あの子が自分で選んだ道くらい、好きにさせてあげたかったんだ」
「アドミラさん……」
クレアがやっと守りたいものを見つけた。
アマラ軍としてよりも彼女の一人の人間としての意思を尊重する。それがアドミラに出来るせめてものの償いだった。
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