仮装と潜入

 

人形メイクにペストマスク。クレアとブラーチの協力もあってリュクレーヌとフランはゴーレムへと変装した。

リュクレーヌは「まるでハロウィンの仮装だな」と少し楽しそうだった。なんだかんだ言って潜入捜査は好きなのかもしれない。


昼のうちにゴーレムに紛れ、マスカと戦う。戦闘が終わり、他のゴーレムと共に夜が更けた頃教会へと戻る。

礼拝が済んで人っ子一人いない教会へはすんなりと侵入できた。あとは他のゴーレムたちの目を盗み、目的地へと向かう。


目的地は、先ほどまで大勢の信者で埋め尽くされていた礼拝堂だった。


「ここまですんなり潜入できるとは。案外チョロいな」


「油断は禁物だよ。バレちゃったら全部台無しなんだから」


「大丈夫だよ。あとはここで待機しておくだけだ」


「ここって……礼拝堂だよね?どうしてこんな所に?」


高い天井に広いフロアはシャンデリアでも吊り下げてあれば、まるで舞踏会の会場を思わせるように豪華絢爛に飾り付けられていた。

シンプルな外装とは裏腹に、中身は派手な教会だった。しかしなぜ、礼拝堂に待機するのだろうか。フランは目的を尋ねる。


「信者のプルーが失踪しただろ。彼は礼拝の後に家帰ったが外出した。その後消息を絶っている。」


「うん、戒律違反をしたからだよね……やっぱり殺されたのかな」


「ところが、ここでおかしい事がある。消息不明なんだよ」


「もしかしてまだ生きているって事?」


プルーが生きていて黒幕というオチでも待っているのではないかとフランは勘繰る。だがリュクレーヌ首を左右に振った。


「いや。それは分からない。ただ、戒律違反で殺されたのだとしたら、見せしめにした方が信者の信仰を強くする効果があるだろう。強制力を増すと言うか……」


「うぅん……過激な宗教だと思われたくないから、とかかな」


「俺の考えはこうだ。"彼は、殺されなければならなくなった"のではないかと」


「それ……どういうこと?」


「例えば……見てはいけないものを見てしまった、とかな」


「!」


リュクレーヌが仮説を立てた瞬間、礼拝堂にコツンと固い音が響いた。


「っ……誰か来る!」


足音だ。不規則なテンポで刻まれる足音は二人分であることを示す。


「見てはいけないもののお出ましかもな」


リュクレーヌは待っていましたと言うように。物陰から足音の主の方を伺う。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る