働き蟻だらけ

しかし、リュクレーヌには考えがあるようだ。指を左右に振りながら。ちっちと舌を鳴らした。


「厳格じゃない信者に聞けばいいんだよ。これだけ信者がいるんだ。信者の中にも一人や二人くらいテレーノ教自体を疑問視している奴が居てもおかしくないだろ」


どんな環境にも働きアリの法則は成り立っている。

ましてや母数の多い、テレーノ教の信者なら、尚更二割の熱心さを忘れた信者を探すのはきっと容易い。

聞きたいことは、内部を知りつつ、戒律に疑問を持っている信者に聞けばいい。


「そっか!確かにそうだね!」


「そうとなれば早速聞き込みだ!」


二人は再度、教会へと向かった。

 


教会の周りには相変わらず多くの人でひしめき合っていた。

教会のドアは開いているものの、当然全員入れるはずもなく、教会の外で祈りを捧げる者がほとんどだった。


「前よりも増えてない?」


「そりゃ、信者が増えたからな。でも、別に前の方まで行く必要はないぞ」


「え?どうして?」


「熱心じゃない信者は大抵後ろの方で祈りを捧げるふりをしているだけだからな」


「そんな、学校の授業の席順みたいな……」


経験論だろうか。とフランは思いながら、確かに自分もアマラ軍の訓練所時代、座学の授業では後ろの席に座っていたものだと思い出した。


「ほら、早速声をかけるぞ。すいませーん」


これだけ多くの信者が居れば下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。一人くらい捕まるだろうと思っていた。


ところが、誰一人として、戒律に関する文句を言う者は無かった。

そこまで信仰深そうではない信者を選んでいるつもりではあったが──


「いないもんだね」


「皆、信仰深いもんだ。こんな胡散臭い宗教よく信じられるな」


二人はひとまず諦めて帰ろうとした。事務所でもう一回作戦を練りなおそうと考えていた。

教会から少し離れた建物の隅で座り込む人が居た。

近づくとすすり泣く声が聞こえる。


「ん、誰かが泣いている?」


リュクレーヌとフランは泣き声の方へと近づいた。


「どうしたんですか?」


「あぁ、プルーを……を返して! !テレーノ教なんて……滅んでしまえばいいのよ!」


「落ち着いてください。僕らはテレーノ教の信者ではありません」


泣きじゃくり、テレーノ教への恨みを口にした女性に声をかける。とりあえず落ち着いてもらうために、自分達は信者ではない事を伝えた。


「一体何があったんですか?」


フランが訊く。

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