心と戒律
◆
それから一週間が経った。二人は調べようと言った、テレーノ教について調査をしていた。
テレーノ教は、本来大地──つまり土の神に感謝をさ捧げる、小さな宗教だった。
だが、ゴーレムが現れてから信者も大量に増え、戒律なども公になっていった。
「テレーノ教は随分と戒律が厳しいみたいだね」
「そうだな。日没に教会で祈りを捧げる……ただそれだけの宗教だと思っていたんだが、な。礼拝後は真っすぐ家に帰りそれ以降は外出禁止。」
一般的に知られていた情報としては、夜に礼拝がある程度のものだった。
しかし、礼拝の後は一切の外出は禁止という戒律まで現れた。恐らくゴーレムが増えてからの後付けだろう。
理由は明白だ、夜の方がマスカの動きは活発になる。信者たちの安全をできるだけ確保するためだ。
「他にも、飲酒・喫煙の禁止」
「禁断症状とか出ないと良いけど」
「街以外への訪問禁止」
「この街から出て行くなって?無茶言うなよ」
「娯楽類の禁止、勤労と勉学のみに励みなさい……」
「これ!これが一番意味わからない!娯楽禁止ってトランプもチェスも全部禁止って事だろ!俺なら死んじゃうね!」
リュクレーヌは遂に、荒々しく声を張り上げる。
「リュクレーヌは死なないでしょ」
「心が死ぬって意味だよ。娯楽無しの人生なんてない方がマシだ」
「あぁ……そうか、ごめんね」
リュクレーヌの言いたかったのは心に与える栄養を亡くして身体だけ生きていても意味がないだろうという事だった。
フランは軽く頭を下げる。
「ここまで戒律が厳しくても信者は後を絶たないみたいだよ」
「信じられねぇな。我慢我慢我慢の生活を強いられるんだぞ?」
「それでも、ゴーレムに護ってもらいたいんだろうね」
「心を失ってまで命を守るってか……」
入信して、ただひたむきに戒律を守り、祈りを捧げれば、命はゴーレムによって守られる。
だが、リュクレーヌにとっては、その戒律がどうも命を人質に自身の人生における生きがいを奪うだけのものにしか見えなかった。
「たくっ、何のための戒律なんだか」
「これ……違反したらどうなるんだろうね?」
「それは、信者に直接聞きこみをするほかないな」
「でも、厳格な信者さんたちが教えてくれるかな?」
テレーノ教の信仰熱心な信者たちに聞き込みなどできるものだろうか。フランは不安だった。
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