戒律違反者への報い

「私の息子がテレーノ教に入信したばかりに、失踪してしまったのです」


「失踪!?」


「それは、どうして……詳しく聞かせてくれませんか?」


思わぬ形で宗教団体の闇へと近づいた。女性は「えぇ」と頷くと話を始める。


「ある日の夜の礼拝で祈りをささげた後、彼は飲むべき薬を教会に忘れてきたのです。やむを得ず、教会へと取りに帰りました」


信者であった息子、プルーは薬を取りに帰るために、教会へと帰った。


「しかし、夜の礼拝後の外出は禁止。息子は帰ってきませんでした」


「なるほどな、戒律を破ったから失踪したと」


やはり、戒律違反は厳しく罰せられるのだろう。外出禁止の戒律を破ったプルーは失踪した。

それが、教会のせいであるという証拠こそないが、可能性としては考えられる。


「うぅっ……息子は、テレーノ教に殺されっ……うぐっ!?」


女性の胸を槍のようなものが差す。

いや、槍ではない。槍のように先端がとがった腕だ。

人間ではない?だとすれば──


女性が倒れると彼女を刺した犯人が二人の視界に映る。

人形の躰にペストマスク──ゴーレムだ。


「なっ……ゴーレム!?」


「おい!何をやっているんだ!人間だぞ!」


リュクレーヌはゴーレムに怒鳴りつける。

彼らに自我があるのだとすれば、言葉を理解できるのであれば、人間を殺してしまった事に気づくはずだ。

ところが、目の前のゴーレムは何一つ狼狽えることなく、リュクレーヌの言葉に耳を貸す事は無かった。


「テレーノ教に逆らう者は殺すってか?従順なこった」


「やっぱり、自我はないみたいだね……うわっ!」


自我が無い。

その上二人のことすら敵とみなしたのか、攻撃を仕掛けてきた。


「どうやら、戦う以外ないみたいだな」


「戦うって!そんな、どうやって」


「忘れたか?こいつらは実質マスカだ。同じように戦えばいい」


そうだ、ゴーレムという名前を掲げようと彼らはマスカだ。その上人を殺してしまっているのだ。

──彼を止めなければ


「分かった!」


フランは、スチームパンク銃を取り出し、突き付ける。

だがゴーレムは一切動こうとしない。


──目が見えないのか?耳は?じゃあどうやってマスカと戦ったんだ?


フランは攻撃を躊躇する。もしかして、何か作戦でもあるのか?

いや、それでも──


思考を回しているうちに、ゴーレムの方から攻撃に入った。

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