支援金と犯人の目星

マスカを倒せるのはアマラ軍だけ。となれば、マスカに関する法案であり、決まり事を作るのであれば、アマラ軍が口を出すはずである。


「それが、全くなかったってこと?」


「そうよ。それどころか、パパが居ない間に勝手に決められちゃった」


「うーん……」


緊急事態とは言え、アマラ軍への助言どころか、最高責任者のいない間に法案は可決された。

まるで、タイミングを見計らったかのように。


「他に何かあるかしら」


「うん。あるよ。この記事を見て欲しい」


一番聞きたかったことを聞く。フランが掴んだ新聞記事。

握りしめたせいでくしゃくしゃになった紙をテーブルに広げた。

アマラ軍への支援金の案内。これをアマラである彼女たちは果たして知っているのだろうか。


「支援金……?何、これ?」


「アマラ軍への支援金だって。やっぱり知らないか……」


「えぇ、初耳ね……パパもこんな事言っていなかったわ」


「だとしたら、これは、新聞社が勝手に金を集めて、協力者に横流しするお金か、はたまた自分達でせしめるお金か……」


記事の為なら手段を択ばない極悪非道な新聞社だ。善意で集めた金を悪用する可能性だっていくらでもある。


「新聞社って?」


「ネオン新聞社。僕たちが取っている新聞なんだけど……まあ、酷い所だったんだ」


マスカが出現する情報が有るのであれば、事前に避難を促すのが、情報を扱う人間の仕事なのでは無いのか。

被害が出てから、現場に駆け付け仕事をする。まるで、被害を喜ぶような──人の命なんて虫けらも同然なのだろうか。

何が彼らをここまで狂わせたのか、或いは元々彼らは悪人だったのか。分からない。理解できなかった。


「クレアの言った通りだったよ……彼等はアマラ軍を応援するよりも、叩きたいものを叩くために、この騒動を利用している」


「そうだったの……」


クレアは俯いた。怒りに任せて発言したことは現実だった。


「ねぇ、私からも質問いいかしら?」


「勿論。何かな?」


「もう犯人の見当はついているの?」


核心をつく質問に、フランは取り乱す──かと思えば、余裕の笑顔を一つ浮かべる。


「あぁ、そうだね。見当がついているからここに来たんだよ」


「そうなのね。ここで犯人捜しをするって訳じゃなかったのね」


「そうだよ。アレを知っているアマラは限られてくるからね」


犯人を特定する決定的な証拠があった。それはリュクレーヌにもフランにも分かっていた。だからこそ今ここに居る。


「アレ?」


決定的な証拠がクレアには分からずに首を傾げる。


「とにかく、協力者……オクトさんをここに呼んでくれないかな」

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