助手の演じる面影

「っ……!」


背後から現れたクレアが即座にフランを取り押さえる。

何が起きたのか理解できないアイラは腰を抜かし、その場にぺたんと座り込んだ。


「ああ……あ……」


「逃げてください。彼は私が連行します」


そう言って、クレアはフランを拘束し、軍内部へと連行した。

 

軍内部は入口こそ、多くの関係者がいてざわついていたが、歩き進めるうちに人は減り、遂には二人きりになってしまった。

地下室へと続く通路。ここは以前、リュクレーヌの面会の為に来たことがある。フランにも見覚えのある場所だ。


「上手くいくもんだね」


「そうね」


「アイラさんには悪いことしちゃったなぁ……」


「演技とは思えない気迫だったわ……もう、やりすぎよ」


「ごめん、ごめん。でもこれくらいやらなきゃバレちゃってたよ」


反省はしている。正直、何も知らないアイラを怖がらせてしまった事は申し訳ない。

だが、これも作戦の為だった。中途半端な事をしていれば、失敗に終わる上、ファントムや協力者を刺激しかねない。


「貴方、だんだんリュクレーヌに似てきたわね」


「えぇ!?それはなんか嫌だな……」


「ふふっ、さ、取り調べ室へ行くわよ」


クレアの唐突な指摘にフランは眉間に皺を寄せた。

──リュクレーヌに、似ている?どこが?

すぐにでも反論したいところではあったが、目的地である取調室へと到着したためそれは叶わなかった。

 

誰も居ない取調室へと二人は足を踏み入れた。

牢獄ほど不気味な雰囲気は無いが、それでも殺風景な空間であった。

有るのは、裸電球とテーブルと二人分の椅子だけ。地下のため窓もない。二人は椅子に着き、向かい合う。


「さてと、じゃあ聞かせてもらおうかしら」


「というよりも、聞きたい事があるのは僕の方なんだよね」


「私への聞き込みって事よね」


「そうだね。そうなるね」


クレアへの聞き込み。つまりはアマラ軍への聞き込みだ。

この情勢で、当のアマラ軍への変化はあったのか。それに、昨日フランが新聞社からくすねたあの記事の事も聞かなければならない。


「まず、このアマラ軍を支援する流れが出来たのはいつから?」


「マスカ特別法の制定からかしらね。二人が船旅に行っている間よ」


「ということは、アドミラさんも居ない間ってことか……」


「パパも何も知らなかったみたい。でも、おかしいのよね」


「何が?」


「パパが言っていたの。マスカ関係の法案を作るのであれば専門家であるアマラが助言をするはずだろうって」

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