募金活動は証拠に

「こちらにはありますよ、証拠。タレコミが外部からという、ね」


「こんなの、いくらでも偽装出来るだろ」


「どうしても疑うのであれば、監視して頂いて結構ですよ。勿論、無実だった時には今度の標的はあなた方になりますが」


「クソ……」


腹いせにターゲットを変えると編集長は言う。

万事休す。ここまで毅然とした態度で対応されてしまったらもうどうしようもない。


「帰るぞ。フラン」


「リュクレーヌ……」


「何を言っても、何を聞いても無駄だ」


諦める。それしか道は無い。


「えぇ、それが良いでしょう。それではさようなら」


笑顔で手を振る編集長を背に、二人は帰路についた。


 

「ムカつくよね」


「わぁ、単刀直入だな」


事務所に戻ってきたころにはもう夜も更け、いつもであればそろそろ眠る時間であった。

だが、フランはソファに座り込み、しかめ面だ。


「だって!あの人たちなんの?ほんと!信じられない!記事が書ければそれでいいの?」


ローテーブルを叩きつけて叫ぶ。近所迷惑など考えている余裕などない。とにかく今はこの怒りをどこかにぶつけなければ腹の虫がおさまらない。


「いいんだろうな。きっと。それで飯食ってるわけだからな」


「……絶対に、しっぽを掴んでやる」


怒りと悔しさをにじませながら手に握っていた紙切れを、ぐしゃりと握りしめた。

それに気づいたのかリュクレーヌは指摘する。


「掴むと言ったら、フラン。お前何持ってるんだ?」


「あぁ、これ?書きかけの記事だね」


手のひらを開いて紙切れを見せる。幸い、インクは乾いていたから何が書かれているのかは分かる。


「……アマラ軍への募金を?なんだ。広告か」


「募金だと?」


「うん。寄付を募集しているんだってさ」


アマラ軍への支援金の募集。ただの広告であり、新聞社の取材記事などでは無かった。

だが、リュクレーヌの表情はみるみるうちににんまりとご満悦の笑顔へと変わっていく。


「……よし。フラン、お前はアマラ軍に出頭しろ。まぁ自首だな」


「自首!?なんで、僕犯人じゃないのに!……何か考えがあるの?」


「当然。潜入捜査だよ」


「アマラ軍への潜入捜査って事か……もしかしてさっきの記事で協力者はアマラ軍に居るって思って……」


アマラ軍が寄付金を募り、新聞社と協力している。アマラ軍の中に新聞社に情報をリークしている者がいる。

考えてみれば簡単だ。そもそもファントムを拘束しているのもアマラ軍。情報などいくらでも手に入るだろう。


「そうだよ。協力者は絶対にアマラ軍内部に居る」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る