編集長は世論を掌握する
「見ない顔だな……どちら様で?」
「名探偵だよ。アンタらが信仰するアマラ軍直属のな」
アマラ軍の名前を出しても、編集長は余裕綽々の態度だ。
「これはこれは、随分と横柄な探偵なことで」
「横柄なことしているのはどっちだろうな」
「我々はファントム討伐とアマラ軍の功績に関する記事を書くために、日夜命がけで取材をしているだけですが?」
「とか言って、お前ら結局アマラ軍を盾にして自分の気に入らない勢力を叩きたいだけだろ」
「へえ。だったら何だって言うんです?」
編集長は開き直るように、リュクレーヌを煽った。
「だいたい、記事の大元になったのはメリーさんの取材だろ。アンタがオカルトじみたって没にした。そのせいで彼はマスカになったんだ」
「あぁ、そんな奴もいたな。マスカになって人殺しになったウチの汚点だよ。警察が取り調べに来て大変だったね。まぁ取材ノートは残してくれていたから生贄かな」
メリーは新聞社にとって──編集長にとってはただの生贄だった。占い師を殺し、マスカへと変貌した彼に慈悲など無い。
それどころか、面倒事を起こした厄介者だという。
「このっ……人の命をなんだと!」
編集長の発言に、怒りを露わにしたのはフランだ。慌ててリュクレーヌはフランを制止する。
「フラン、落ち着け!」
「だって!」
「あぁ、やめておいた方が賢明ですよ。殺人未遂でアマラ軍をクビになった少年とマスカが新聞社を襲撃……という記事が出る前に」
形勢逆転と言わんばかりにエディはペンを取り、ジャニーはカメラを構える。
記事を書く準備は出来ている、といっているようだ。
「きたねぇな」
「汚いか綺麗かは世論が決めるんですよ。その世論を作っているのは私達ですけどね」
「……っ!」
フランは歯ぎしりをした。机上の書きかけの記事を拳と共に握る
「一つ聞かせてくれ」
「何でしょう」
「タレコミなんて本当にあるのか?」
「タレコミ?」
「マスカがここに来ますっていう情報だよ。こいつらが口を滑らせたんだ」
リュクレーヌは親指で軽くエディたちの方を指し示す。
すると、編集長は不機嫌そうに「チッ」と一つ舌打ちをした。
「タレコミなんてなくて、そもそもアンタら、ファントムとグルなんじゃないか?一連の事件はこの新聞社がファントムと手を組んで仕掛けた自作自演……とか」
「証拠はあるのですか?」
「……」
リュクレーヌは黙り込む。すると、編集長は何枚もの手紙のようなものを見せびらかした。
内容は、マスカが現れた場所を示している。つまりはリーク情報だ。
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