自首大作戦

「でもアマラ軍って言っても沢山人がいるよ。特定するなんて……」


「いいや。出来る。奴がとんでもない事を口走ってくれたおかげでな」


リュクレーヌは自信満々だ。奴?誰だろう……とフランは俯く。

いや、確かにいた。彼しか知りえない情報を口走ってしまった者が。


「……あっ!そうか。なんでアレを知っているの?ってなるもんね!」


「そういう事だ。頼んだぞ。あ、あとこれを持っていけ」


手に持っていたのは小さなブローチだった。手渡されてすぐ、フランは鞄にしまった。


「うん。わかった。」


こくりと頷く。作戦は決まった。リュクレーヌはリュクレーヌで別の動きをするという。


「じゃあ、今日はもう寝るぞ。明日に備えてな」


「うん」


大丈夫。きっとこの作戦は上手くいく。不思議と自信があった。

 

 

アマラ軍本部。ここに来るのは2ヶ月ぶりだ。ファントムを捕らえる作戦のために、アマラ軍と共に戦ったきりだった。


「こんにちは」


受付まで行き、一人の女性に声をかけた。

女性はフランの顔を見るなり、目を丸くした。


「あら、フラン君じゃない!久しぶり」


「お久しぶりです!アイラさん」


アイラはフランのアマラ軍時代の知り合いだった。

互いの雰囲気からして、それなりに仲のいい知り合いだったのだろう。


「元気にしていた?なんか、急に辞めちゃったから心配したのよ?」


アイラはフランがアマラ軍をクビになった事、辞めた理由を知らない。

そもそも、それなりに仲のよかった軍内部のアマラも知らない事情だ。

誤って人を撃ってしまったという理由が理由だけに、クビであることも伏せられていたらしい。

流石に、本当の事をいう訳にもいかなくてフランは笑って誤魔化す。


「いやー、心配おかけしてすみません…」


「それよりも、何の用かしら?」


「これを」


フランはガンホルダーからスチームパンク銃を取り出して、アイラに見せる。


「え?これって銃……よね?」


「えぇ、ファントムから貰ったものなんですよね。これ」


「ファントム!?」


「つまり、自首です」


「!?自首って……何したの!?フラン君!」


アイラの顔色がみるみると青ざめる。

隙を見せたのをいい事に、フランはそのまま銃を構えて、アイラに突き付けた。


「まだ分かりませんか?僕が協力者なんですよ。ファントムのね」


「嘘……そんな、誰か!助けて!!」


流石にマズい状況だと理解し、彼女は強く叫び、助けを求める。

周りにいるアマラ軍も驚き、一瞬、狼狽えた。

だが、狼狽えなかったアマラが一人だけいた。


「何をしてるの?」

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