タレコミスクープ

みるみる上空から何かが落ちてくる。地上への距離が縮むたびにその正体が明らかになる。


マスカだ。


「っ!?うわあああっ!」


マスカは、フランの方へと墜落した。


噴煙が舞う。


「おい、フラン!」


視界が晴れない。見えない不安の中リュクレーヌは必死で声をかける。


「リュクレーヌはこの人たちを!うぅっ!」


声がする。無事のようだ。指示は、一般人二人を安全なところへ避難させる事。


「分かった!おい、危ないから離れろ!」


土煙はみるみる晴れていく。フランの姿が露わになった。苦戦しているようだ。余計な心配を書けない為にも早く一般人を避難させなければ。リュクレーヌは急かした。


「あぁ、可哀そうに。子供が襲われている」


「子供はネタになるからな、しっかり撮っておけよ」


しかし、男たちは、リュクレーヌの指示など聞く耳も持たず、カメラのシャッターを切り続ける。

まるでフランをだしにするように、とんでもない事を口走りながら。


「お前らっ……何言って!」


「離れて!」


突如閃光がちかりと辺りを照らす。次の瞬間、マスカは爆破し、姿を消した。


爆発の煙からはフランだけが生還し、姿を現す。


「え?マスカを倒した?」


メモを持った男性がきょとんとする。


「そんな、アマラ軍まだ来ていないのに!これじゃ記事が書けないじゃないか!」


カメラの男は憤慨した。あぁ、これでもまだフランがアマラという事に気づいていないのか。


「生憎だが、うちの助手は優秀なんだよ。ナメてもらっちゃ困るな」


リュクレーヌは呆れながら、鼻で嗤った。


「それで、お前らどういうつもりだ?」


「え?僕らはただ取材に来ただけですよ?」


「ほら、この通り。新聞社の者です」


二人は懐から名刺を出す。

メモの男はエディ、カメラの男はジャニーという名前だった。いや、それよりもこの新聞社の名前には見覚えがある。

ネオン新聞社。これは──


「この新聞社って……」


「あぁ、メリーさんが居たところだな」


いつも自分たちが取っている新聞だ。リュクレーヌの知り合いであったメリーの元勤め先でもある。

彼はファントムへ取材をし、その後マスカへとなってしまったのだが。

気になる事はまだまだある。


「それで、タレコミがどうとか言っていたのは?」


「あぁ、それですか?マスカがここに出現するっていうタレコミがあるんですよ!」


「なんだと!?」


思わぬ情報だ。マスカの出現をリークしている人物が居る。

協力者を突き止めるには重要な手がかりだ。


「馬鹿っ!それは言うなって編集長に言われただろ?」


エディが口を滑らせたジャニーの頭を叩く。極秘情報だったのだろう。

だが、この機を逃すわけにはいかない。

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