古書堂の修繕作業
「ごめんください」
現場となった書店は、襲撃から日も浅く、あちこちに本と瓦礫が散乱していた。
舞い散る埃とふるびた紙と黴の臭い、書店、というよりも古本屋だった。
奥の方からのっそりと、年配の書店員が出てきた。
「はい、はい」
「すいません。ちょっとお話をいいですか?」
「あぁ、悪いが後にしてくれないか!修繕作業で忙しいんだ!」
「ごめんなさい、少しだけでいいんです」
フランが申し訳なさそうに頭を下げながらお願いする。書店員は鬱陶しそうに深いため息をついて、睨みつけた。
「たく、どいつもこいつも、この間来た新聞社の奴らもそう言ってずっと居座っていやがった」
「あ、安心してください。僕達は記者ではありません。名探偵とその助手です」
「探偵?」
「この本屋がマスカに襲撃されたと聞きましてね、その黒幕を追っているところです」
「黒幕だと?マスカを作っているのはファントムだろ?」
マスカ騒動の黒幕はファントムである。これも公共の周知であった。当然だろう?と書店員はリュクレーヌ達の方に聞き返す。
「そう。ですが、ファントムは絶賛拘束中。ファントムの協力者を探しているのです」
「当時の話を教えてくれますか?」
ファントムは活動不能。目を覚ましたと言え、拘束中の身だ。
だからこそ、「協力者」を探して捕まえなければならない。二人の真剣な態度に、書店員は頷いた。
「いいぜ」
「ありがとうございます!」
「ただし、そのかわり……」
一つ、二つ、古本が積み上げられる。ずしん、と重たい紙の束の音と共に砂埃が舞う。
「修繕作業を手伝ってくれって……」
「ま、有力な情報と引き換えな訳だし、フランは普段掃除してくれているしこれくらいどうってこと無いだろ?」
「いやいや、本の量も多すぎるし、あー、腰痛くなってきた」
「だらしねぇな。そんなに重いか?これ」
腰をたたくフランをよそにリュクレーヌは本の山をひょいと持ち上げる。
まるで、綿菓子を運ぶように軽々と。
「よく軽々と持てるよね」
「うん、まぁ俺マスカだしな」
「あぁ、そうだった……」
そういえば、とフランはハンディに気づく。
「おーい、今度はこっちだ。来てくれー」
「はーい。ほら、行くぞ」
「ひいいい……」
フランの悲鳴などお構いなしに、暫く書店での修繕作業が続く。
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