協力者の存在

「今のところ考えられるのは、術をかけた奴が傍にいて発動させている可能性だな」


「なるほど、だからこの銃にかけられた魔術の主を探しているって訳か」


「そうだ。フラン、この銃はいつ、どこで手に入れたものだ?」


改めて確認する。銃に魔術をかけた人物を特定するために。


「……どうして」


「ん?」


「どうして、今それを聞くんですか?」


フランは警戒するようにブラーチの方を見た。

ピリピリとした空気が漂う。


「確かにそうだな。今更って感じもする。何か理由があるんじゃないのか?」


リュクレーヌがフランに同調しつつ、ブラーチの本心を確かめようとした。

突然、焦るかのようにフランに質問をする理由を。

すると、暫くブラーチは黙り込む。何かしらの理由を言いにくそうにしていたが、ようやく口を開いた。


「……ファントムが、目を覚ました」


「!」


ブラーチの魔酔によって封印されて深い眠りに就いていたはずのファントム。

眠りは一ヶ月ほどのものだった。彼はアマラ軍の監獄で目を覚ました。

元々完全に封印する事の出来る魔術では無いから当然と言えば当然だが。


「アマラ軍で厳重に警備しているから逃げたりはしないわ。」


「もう一度ブラーチの魔術で眠らせれば良いんじゃないか?」


「やってはみた。だが、もう同じ手は効かなかった」


「アイツもしぶといもんだな」


「だから、私達ガーディアンはファントムに取り調べをすることにしたの」


もう同じ魔術は効かない。だからせめて利用するしかない。

クレアが取り調べをしている時、彼は意味深な事を口走った。


「彼は言ったわ……『ボクには協力者がいる』と」


「協力者……」


「まさか!アマラ軍はフランを疑っているんじゃ」


「その通りだ。アマラ軍は、フランが不死のマスカと組んだのも最初から作戦なんじゃないかと疑っている」


「そんな!僕は無実だ」


「ならば銃の出所を話してくれ!」


ブラーチが強く言う。アマラ軍の疑いを晴らす為だ。

友人であるフランを疑わなければならない状況に終止符を打ちたい。


「……そうだな、フラン。ちゃんと正直に言う事で無実を証明できるかもしれないぞ」


無実ならば素直に言えば良い。リュクレーヌが促す。

すると、フランは震えながらため息をついて、怯えた表情で事実を話し出した。


「……あの銃は、ルーナエさんに貰った」


「それって!」


「ファントムじゃないよ!あれはルーナエさんだった!」


あの地獄の中で銃を渡したのはファントムなんかじゃない。ルーナエだ。

自分を助けてくれた恩人は確かにルーナエだった。フランは断言する。

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