スチームパンク銃のデザイン

しばし、沈黙が続く。ルーナエがファントムでは無かったという証拠は何もない。


今度はリュクレーヌがため息を吐いた。やれやれと言うような、深く大きなため息を。


「……やっぱりなぁ」


「リュクレーヌ?」


「あの銃、やっぱりルーナエのだったんだな。いや、そんな気はしてた」


「どうして」


「アイツ、ああいうデザイン好きだったんだよ」


「いや、デザイン!?」


根拠は意外なものだった。銃のデザインはルーナエの趣味だと。

たったそれだけであの銃に魔術を掛けた人物でルーナエだと判断するのか?とブラーチは問う。


「と言うのは半分冗談。状況的にあの時だろうなって言う気はしていたんだ。けど俺を撃ったせいで半信半疑だった」

ルーナエはマスカに殺されかけていた幼いフランに銃を託した。ルーナエが命の恩人だという事からその可能性は高いと考えていた。

だが、彼は「同じ顔の人物に会ったら殺せ」とフランに命じている。つまり、リュクレーヌの暗殺だ。


結局リュクレーヌは不死身となった。

これはファントムにとっては厄介であった。そしてファントムがフランの銃を見た時に彼に託したことを知らなかった様子だ。

これらの経緯によって銃を託したのはファントムではなくルーナエである可能性の方が高いとリュクレーヌは考える。


「ま、出所がファントムだろうとルーナエだろうと、フランがファントムの協力者って事は無いと思うぜ。お前らもそう思ってるんだろ?」


ブラーチとクレアの方を見て確かめる。


「えぇ、勿論」


「それは分かっている」


二人は頷く。もう一度ため息をついてリュクレーヌは新聞の方を一瞥した。


「だが、この通り今、この街はファントムとマスカへの不安で包まれている」


「ファントムもマスカも数年前からずっと居たぞ。それを今更……」


マスカの正体が悪魔に作られた兵器である事が公になり、国は半分パニック状態だ。

疑心暗鬼に呑まれ、身内すら殺してしまいかねない状況を招くまでには。


「分かっているわ。けど、アマラ軍は何としても協力者を捕まえようと躍起になっているのよ……」


「疑わしきは即連行ってことか。さっき来ていた依頼人たちと一緒だな」


疑心暗鬼の闇はアマラ軍にまで進行していた。

だが、フランは協力者なんかじゃない。潔白を証明する方法はただ一つ。


「だったら、俺達が探してやるよ」


「え?」


「俺たちは探偵だ。ファントムの協力者くらい捕まえてきてやる!」


探偵として、疑心暗鬼の波を止める。

リュクレーヌは啖呵を切って、誓った。

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