300○○で競られる彼等

「フラン!?お前っ……何捕まっているんだよ!」


「部屋を出たところで捕まったんだよ!アクリウスさんに!」


鎖で拘束されたフランはマスカの手によって乱暴にリュクレーヌと同じ檻の中に押し込められてしまった。


「あーもうっ……これは俺の作戦ミスでもあるなぁ」


「うう……ごめん……銃も取られちゃった……」


「マジかよ……詰んだ、完全に詰んだ……」


二人は頭を抱えた。絶望の空気が檻の中を漂う。


一方、マスカはテンションを上げて木槌を手に取った。カァンッと叩きつけられる音がホール中に響くと


「さぁさぁ、皆さん!今宵は貴重な人間たちです!セット出品致します!」


と言って、早速オークションを始めた。


「スタートはいくらにしましょうかねぇ……」


「100!」


客席から一人の男が言う。


「おぉっ!お目が高い!それでは、100スタートで!」


もう一度木槌が叩かれる。

その後は「200」「250」と跳ね上がっていくだけの数字が木魂した。


それが金額を意味するものだとばかりフランは思っていた。


「300!」


「300!これ以上は居ませんか?……居ませんね?」


カンカンと乾いた音で木槌が叩かれる。


「決定です!300です!」


どうやらリュクレーヌとフランの価格が決定したようだ。


「ひどいよ、僕たちたった300ポンドだって」


フランは抗議した。人二人の命が300ポンドほどで取引されるなんて、と。


それも、貴重な出品だと煽った挙句、この金額であれば、文句の一つも言いたくなる。


尤も、その金はリュクレーヌとフランには一銭も入らないのだが。


リュクレーヌは俯きながらぽつりと呟いた。


「……ポンドなんて誰も言っていないぞ」


「えっ!じゃあ、300シリング?」


リュクレーヌは首を左右に振る。


「ちがう。300人……正確には300体だな」


「どういう事?」


「見てみろ、あの競り落とした男も、他の客も金を持っている気配はない」


「本当だ」


フランは客席の方に目を向ける。

確かに、客たちは、綺麗な身なりをしているわけでもなく、むしろ子汚い格好をしていた。


300ポンドなんて大金があるのであれば、洋服の一着でも新調するだろう。


「ただ、背後に大量の……」


リュクレーヌが指を指しながら言いかけたところでフランは気づく。


彼らの背後に、動かない人形のようなものがある事に。

そして、それは人形なんかではなく──


「死体をお金の代わりにしているって事!?」


「その通り!」


司会者のマスカが嬉々として言う。

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