全問正解と人質
「マスカになった彼らは腹を切った断面を切る形で、元の躰を一刀両断した。マスカなら可能だそれを目立つ場所に置いて、殺人のように見せかけた。それだけだ。だが、一つだけ思わぬ事態が起きた」
「思わぬ事態?何ですか、それは?」
「優秀な名探偵が、全ての遺体を見せろと言い出した。出来るわけないよな。既にアンキューラとカルティスの死体にはメシスとシープの魂が宿っている。死体は二つしかないんだよ。死んだふりなんてしたって、無駄だ。少し調べればバレる」
リュクレーヌたちが霊安室に訪れてしまえば、死体が足りない事に気づかれる。
四人の人物が死亡したのに、死体は二つしかないとなれば、当然船のスタッフ側に何かしらの疑いが向けられるだろう。
「そこで、苦肉の策として、マスカである二人が霊安室に先回りして、死体をバラバラに解体してしまった。顔が分からない形でな。その動きで確信できたよ。この事件はマスカによるもので死体は二つしか残っていないってな」
「なるほど」
「つまり、この船旅は、沈没事故で仕入れた大量の死体をその死体をオークションで売り捌くためのものだったんだよ」
そう、この船旅は、沈没事故の延長線上にあるものだった。
「おそらく、俺を襲った大量のマスカ達も、沈没事故の犠牲者だろ?」
沈没事故で犠牲になった者たちも既にマスカとして憑依されていた。
乗客に扮したマスカがリュクレーヌを襲ったのだろう。
リュクレーヌが一通り、推理を披露すると、マスカがパチパチと手を叩いた。
「素晴らしい!全てご名答です!見ましたか皆さん、これが名探偵の推理です!」
今まで自称でしか名探偵という肩書きを背負う事の無かったリュクレーヌは、いざ、ここまで褒めちぎられると調子狂う、と困惑した。
「あぁ、勿体ない。彼をマスカにして自我を失わせるともうこの推理を聞けなくなってしまう……」
「だったらさっさと解放しろよ」
マスカのわざとらしい、物言いにいら立ちを覚える。
だが、まだ手札は残されていた。
リュクレーヌは口角を不敵に上げて、反撃だと言った様子で切り出す。
「まぁ、優秀な名探偵には優秀な助手がいるもんだ。残念だったな、お前らの好きにはさせ──」
「それは、この子のことかな?」
言い終わる前に、マスカの言葉に遮られた。
マスカは、大がかりな赤いクロスを捲った。
「リュクレーヌ!!」
そこには、優秀な名探偵の優秀な助手が、リュクレーヌと同様にご丁寧に鎖で拘束された状態でいた。
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