闇オークション

 

目を覚ましたのはひんやりとした暗闇の中だった。


「ん……」


腕は頑丈な手錠が鎖に繋がれている。

腕だけじゃない。


力づくで拘束を解こうとしても、びくともしない。

よく見ると、鎖には封印を意味する十字架がところどころにあしらわれていた。


「はぁ?なんだこれ……」


周りは闇に包まれ、視界に入る者は黒色しかない。

リュクレーヌにとって意味が分からないままだった。


その時、闇に包まれていた空間は、ぱあっとスポットライトが差し込み、一部、光で照らされる。


「レディースアンドジェントルマン!ようこそ、化けの皮オークションへ!」


ようやく、ここがどこなのか分かった。


一日目にショーをやっていたホールだ。


自分は鎖で縛られている上、巨大な鳥かごのような檻に閉じ込められている。

少し離れたところに、赤い布がかかった何かがある。


一人の男が、声を張り、客席の方へ語り掛けた。

その正体はリュクレーヌが犯人だと睨んでいたアルティムだった。


やはり、推理は当たっていた。


だが、罠にかかってしまい、拘束されたわけだが。


「本日の目玉商品はこちら!不死身の名探偵です!」


「はぁ、なるほどな……闇オークションか。マスカの」


「その通り」


「やっぱりアンタだったんだな。マグネティカさん……いや、パイラート船長!」


リュクレーヌが正体を告げる。

そう、一見アルティムのように見える彼の正体は、この船の長マリノスだった。


つまり、彼はアルティムの皮を被ったマスカだ。


「やはり気づいていたんですね……見ましたか!皆さん!この通り私めの正体を見破っています!」


誇らしげにマスカは観客に語り掛ける。

観客たちも割れんばかりの拍手を送った。


リュクレーヌはもう一度辺りを見回す。


すると、見覚えのある女が居た。

ディラだ。


つまり──


「……ここのスタッフ全員グルだったって訳だな」


「その通り。それでは、折角ですし、ご自慢の推理をお披露目してもらいましょう!」


マスカはリュクレーヌに推理を披露しろと促す。

リュクレーヌは一度、ちっと舌打ちをすると、しぶしぶ口を開いた。

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