残り物サンドウィッチ

昼間に食べかけていたパンとハムのステーキをフランは調理していた。


季節が季節であったが、幸い、冷やしていたから痛んではいない。

温かみを失ったハムのステーキをドレッシングと細かく刻んだ玉ねぎと葉物野菜と和え、パンに挟みこむ。


残り物サンドウィッチの完成だ。

フランは我ながら良いリメイクをしたものだと悦に浸り、サンドウィッチをリュクレーヌの元に運んだ。


だが、リュクレーヌはというと、上の空と言ったところだろうか、ぼんやりとしていた。

何か、考え事をしているように。


「リュクレーヌ。何を考え込んでるの?」


「……いや、マスカはどうして二人を生かしたんだろうなって」


「あぁ、クレアたちの事?」


リュクレーヌの頭にあったのは、クレアの語った過去。

なぜマスカは逃げたのか。


「アマラもいない、ルーナエも関与していない……となるとファントムの仕業としか思えないんだよな」


「……ファントムが」


「わざわざ、二人を生かす義理があるのか……?分からねぇな」


「ううん……あ、そういえば」


推理の足しになるかは分からないけど、と躊躇するようにフランが付け加える。


「ファントム、僕を殺した時すごく嬉しそうだったんだよね……僕が、絶望する表情を愉しむように」


「……絶望、か」


「そういえば、初めて僕たちがファントムに逢った時……そんな正義感要らないって言っていた気がするんだよね」


三月。クロッカスの花畑で二人がファントムに遭遇した時、彼は復讐鬼となったマスカに対して言った。

「正義感なんてものは要らない」と。


「あぁ、そんな事もあったな」


「もしかして……ファントムは人間の負の感情が必要なのかな?」


「負の感情?そんなもんどうするんだよ。腹の足しにもならないぞ」


リュクレーヌがわざとらしく、大口でサンドウィッチをほお張る。

ピンクのダイスのようなハムが今にも零れ落ちそうだ。


「それは、そうだけど……あぁ、考えれば考えるほど分からなくなってくる!」


遂にはフランも頭を抱える。


「この際、ファントムの目的とかはおいておこう」


「それ以外何を話すんだよ」


話題の転換をするも、リュクレーヌはどこか気乗りがしない様子だった。

フランも、暫く「えぇと……」と話題を探す様に唸っていた。


「あ!リュクレーヌ……大変だったんだね」


「思い出したように言うなよ」


「だって……僕、本当にリュクレーヌがただのどこかの金持ちからお金をせしめていると思ったから……」


「あ、資金源の話か。お前、俺を何だと思ってたわけ?」


分からないことが募るからか、リュクレーヌは少し気を悪くしていた。

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