依頼と苛立ち

「あ!最初にリュクレーヌがファントムの事は絶対に秘密って言ったのにも納得いったよ」


出逢って初めて遭遇した事件。


新聞記者のマスカがファントムの都市伝説を記事にする事にリュクレーヌは反対した。

確かに、記事が出回ってしまえばマスカが大量発生する懸念はあった。


それ以上に、今は破られてしまったアドミラとの約束を破ってしまう事になっていたのだ。


「バレたら状況的にマズかったのは本当だけどな……まぁ、二人そろってアマラ軍の軍人になるところだったわけだ」


「僕は復帰するだけだからいいけど」


「俺は軍人とか絶対無理」


きっぱりと言い切る。

事情が事情だけにアマラ軍を嫌いになるのも無理は無いと、フランも納得した。


「……依頼、受けるの?」


「依頼じゃなくて命令だろ」


わざわざ言い直す。


「じゃあ、受けるんだ?」


確認するようにフランは訊く。

すると、リュクレーヌは俯いたまま小さな声で掠れる様に呟いた。


「……嫌だ」


「嫌って……」


子供が拗ねるような態度にフランも呆れてしまう。


「確かに、あんな事された人の護衛は嫌かもしれないけどさ、ファントムを捕まえるチャンスなんだよ?」


この依頼には最大のメリットがある。

目的としていたファントムの捕獲。


つまり──


「ファントムを捕まえれば、ルーナエさんだって、解放できるかもしれないよ!」


ルーナエの保護に繋がる。

上手くいけば、ファントムとルーナエを分離できるかもしれない。


それがリュクレーヌの望みだとフランは思っていたから説得をするのだ。


「そんな方法、どこにあるって言うんだよ」


「今は無いかもしれないけど……」


「じゃあ、意味ないだろ。ていうか、お前は受けるのか?」


「やるよ」


今度はフランが毅然とした態度で言う。


「僕は、人を守りたい。ファントムを捕まえればたくさんの人が助かるだろ?」


諸悪の根源の捕獲は多くの命を救うはずだから。とフランは言い切った。


だが、リュクレーヌは相変わらず俯いたまま、大きくため息をついた。


「……どうだか」


「何か言った?」


ため息と共に吐かれた嫌味をフランは聞き逃さなかった。

わざと、聞き返された事はリュクレーヌにも分かっていた。だからこそ余計に苛立つ。


リュクレーヌは引き攣らせた顔を上げて、フランの方を睨んだ。


「分かんないな!本当に人を救う気なのか?」


「決まっているだろ!どういう事だよ!」


「ガーディアンになるためじゃないのか!」

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