繋がれてしまった腕輪

「ん?」


「え?」


二人はお互いの腕を見る。

金属の輪が腕に巻き付き、その輪はお互いを鎖でつないでいた。

言うまでもない。二人は手錠に繋がれてしまったのだ。


「なんだこりゃーーーーっ!!!」


両者共に見事にユニゾンで叫ぶ。

そして、すぐさまラルファに怒りの形相を向けて、猛抗議をした。


「ちょっと!どうするんですかこれ!」


「こうしておけば安全だろう!」


「じゃねぇよ!生活できない!」


「そうですよ!お風呂とかトイレどうするんですか!」


同居をしているとはいえ、寝室は別々。

お互いにプライベートは保たれている。

この手錠のおかげで、プライベートが侵害されるのであれば、すぐさま外せと二人はラルファに迫った。


ところが、当のラルファは「何が問題なんだ?」と首を傾げる。

そしてもう一人──手錠の件から今まで腹を抱え、ひいひいと笑いを堪えている者がいた。


「……おいブラーチ。さっきから笑いすぎだ」


「すまないっ……あまりにも面白すぎて」


「笑いごとじゃなーーーい!!!」

 


腕を繋がれてしまい、「どうするんだ、これ」と二人が項垂れていると、事務所のドアの方からパタパタと足音が近づいた。

そして、ノックも無しに勢いよくドアが開いた。


「リュクレーヌ!フラン!」


クレアだ。焦燥に駆られた表情を二人に向け、必死に訴えかけようとする。

何か、あったのか?とフランは事情を訊く。


「クレア?どうしたの?そんなに慌てて……」


「依頼を、したいの!」


「依頼?何があった」


緊急の依頼、それも友人からと来たものだ。

リュクレーヌもまずは詳細を聞き出そうとした。


「パパに……脅迫状が届いたの」


「脅迫!?」


「えぇ……パパの命を狙うって内容の脅迫状が」


脅迫状の内容はアマラ軍の本部を爆破し、クレアの父の命を狙うというものだった。

リュクレーヌの表情がみるみるうちに険しくなる。


「だから二人にも護衛をして欲しいの!」


必死の願いだった。自分の父の命が危ない。焦るのも当然の事だった。

それに、リュクレーヌ達からしても、この事件には心当たりがある。


「その爆破事件。広場のものと関係ありそうだよね」


「だとしたら、ファントムも関わっているはずだ」


「でも、どうしてクレアのお父さんを狙う必要が……」


「それは……パパに説明してもらうわ」


そう言って、クレアは内側から事務所のドアを開けた。


「失礼する」


ドアの先からは背の高い男性が現れた。

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