開き直りの営業トーク

一方、正体を見破られたファントムはというと、もう逃げられない。と諦めた様に俯いていた。


犯人を確保しようと十名近くのアマラ軍が近づく──その時だった。


「あはは……はははははっ!」


ファントムの笑い声と共に、彼を縛っていた鎖などバラバラに砕けてしまう。


「こんなショボい術に、あの子の玩具の銃なんかで僕が死ぬ訳無いじゃん!舐めすぎでしょ!」


「なっ!」


「拘束が解けた!?」


慌てるアマラ軍をよそに、ファントムは宙に浮かび、背筋を伸ばす。

そして、ぺこりと一礼し、深く息を吸った。


「民衆の皆さん!初めまして、悪魔の商人ファントムです」


意気揚々と自己紹介。当然皆、彼の方を向く。


「なんだ!?」


「アイツ、浮いているぞ!」


通常の人間では不可能な行動に群衆はどよめく。


いいぞ、とファントムは怪しく笑った。


「僕は死後、他人に出来る仮面を売っています。あの都市伝説は、本当だったんですよ」


始めたのは自分の仕事の説明。

都市伝説と言う、ぼんやりとしたものだった噂にでてきた悪魔は存在するのである、と。


「大金持ちにでも権力者にでも、死体にならば誰でも転生できます!人生大逆転のチャンスですよ!」


甘い誘惑を並べた営業トーク。

その言葉に誰もが耳を向けた。


「仮面が欲しければ願ってください。さぁ、契約をしましょう!」


「!!」


ファントムはこの場を思い切り宣伝活動に利用した。


「それでは、お待ちしています」


言いたいことは言い切った。とファントムはすぐさま姿を消した。


「あっ!」


「待て!」


「逃げたぞ!」


群衆はファントムの方へと向かおうとする者が何十名かいた。


彼を追おうとするものには、ファントムの言葉に少し興味を持つもの、魅力を感じた者も居るはずだ。


これだけ、大勢の人間が居るのなら、自分の人生を捨ててしまいたいと思う者は、縋りたくもなるだろう。


「皆さん、契約してはいけません!」


「兵器にされるぞ!」


だが、契約をさせるわけにはいかない。

フランとリュクレーヌは警告をした。


ファントムは肝心な事を言っていない。


マスカになった者は兵器になってしまうと。

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