探偵の救出
あれほど処刑を望んでいた群衆の中には目を逸らす者もいた。
パンッと乾いた音が広場に響く。
そう、音だけがした。
──痛く、ない?
銃口を向けられていた男の前に、誰かがいた。
「空……砲?」
もう一人のリュクレーヌは、殺されかけていた男を庇うように立ちはだかり、呆然と呟いた。
「やっぱり、君ならそうすると思ったよ……リュクレーヌ!」
目の前に立った方が本物のリュクレーヌだ、と言いフランは彼の腕を引き、自分の方へと引き寄せた。
「……っ!?フラン?」
「もう大丈夫だから。安心して」
ようやく疑いが晴れた。
自分こそが本物のリュクレーヌ・モントディルーナであると今、証明された。
それだけで、リュクレーヌはひどく安心してしまいそうにもなる。
「あちらの彼が黒幕……ファントムです!」
フランはもう一人のリュクレーヌ──すなわちファントムを指さして叫んだ。
彼こそが、自分を殺した真犯人であると。
すると、一同、「どういう事だ!」とまるでパニックのようにどよめきだす。
それを沈める様に、フランは大きく咳払いをした。
「ファントムはリュクレーヌの記憶を共有していた。マスカの記憶を覗く事ができるんです。」
「あぁ、確かに俺は記憶を覗かれた」
「記憶は、ね」
そう、覗かれたのは過去の記憶だけであった。
「けど流石に、リュクレーヌの心までは読めなかったようだね!」
リュクレーヌの記憶ではなく心。
「リュクレーヌの本心にはルーメンさんを守りたいという願望があった」
その願望はファントムにも記憶を共有した段階で分かっていたはずだ。
「だとしたら、彼に危険が及んだ時点で咄嗟に庇うんですよ」
だが、リュクレーヌがどういう行動をするか?という事までは分からない。
そう、リュクレーヌならこうするだろう。といった彼の心と行動パターンを理解している者にしか。
「流石に、記憶を知っていても、リュクレーヌがどうするかは分からない。過去は分かっても未来の行動は予測できなかった!」
つまり、彼の心に基づいた未来予想を逆手に取った、手段だったのだ。
当然フランに、ルーナエを殺そうという気などさらさら無かった。
今回の作戦の目的はリュクレーヌの救出であるからだ。
だからこそ、空砲を放ったのだ。
見事、作戦は大成功。本物のリュクレーヌを救出する事が出来たのだ。
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