患者の願い
リュクレーヌはアマリリスに言い放つ。
もうこの女から聞く事は無い。
あとはカレンに直接話を聞くことにしようとしていた。
だが──
「……出来ないわよ」
「そんな事ないだろ。今日も家で留守番してるんじゃないのか?」
「いいえ。彼女は、昨日から行方が分からない」
「何だと!?」
重要参考人は、行方を晦ましていた。
「彼女の行先に心当たりは!」
「ある訳ないじゃない!昨日、家に置いて行ったはずが、帰ったら居なくなっていたのよ!」
確かに、カレンは両親から留守番だと言われていたのに病院に来てしまった。
その時点で、両親にとって彼女の行先は不明となったのだ。
「……くそ、まずいな。一番の証人なのに」
「ラルファさん、警察の方で捜索する事は……」
「可能、だが……捜索範囲が絞れない。捜査にはかなり時間がかかりそうだ」
彼女の居る可能性がある、病院からロンドンの自宅まで、広い範囲での捜索になるだろう。
だとすれば、捜査には一日──いやそれより何倍もの時間が必要だろう。
「どうすれば……」
「……マリーに聞いてみるしかないな」
戸惑うフランにリュクレーヌが提案した。
「マリーちゃん?どうして」
「双子が入れ替わっているなら、マリーにカレンの記憶があるはずだ。行先の心当たりとかも、あの母親よりもあると思う」
入れ替わる前とは言え、互いが記憶を共有しているはずだ。
カレンに聞き込みをする予定だった内容をマリーに聞く。
きっと、聞き方さえ間違えなければ、マリーはカレンの記憶から答えを出してくれるだろう。
そして、さらにはマリーからカレンの行方まで導けたなら最高の結果だ。
「時間は無い。だが、これが最善の策だ」
リュクレーヌ達はマリーの方を見つめ、聞き込みをすることにした。
「君に教えて欲しいことがあるんだ」
病室のベッドで手持ち無沙汰にしていたマリーに、二人は問う。
「なぁに?」
「マリーちゃんの事を教えてくれ」
「マリーの事?」
「そう。マリーちゃんが今までどんな生活をしていたのか。家族の事をどう思っていたのか」
経緯を知りたい。
双方の主張が合致すれば、きっと犯人が分かるはずだと思っていた。
「えっとね、マリーはもうすぐ死んじゃうと思っていたんだ」
不治の病ならばそう思うのも無理が無いだろう。
「マリーが元気になっておうちに帰ればまたみんなでくらせると思ったのに……」
四人で暮らしたい。昨日、カレンに聞き込みをした時と同じことを言っていた。
「今日もね、びっくりしちゃった。だってママが急に注射をしてきたんだもん!」
アマリリスが致死量の毒を注射した事だろう。彼女たちに平穏は無い。
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