真犯人が分かるまで

死なない少女。その正体はマスカであった。

ラルファは顔を顰め、リュクレーヌに怒鳴る。


「だったら何故戦わない!」


「彼女たちは自分の意思でマスカになっていないんです。だれかが彼女たちを唆した」


そう、真犯人がいる。それが分かるまでは、戦えない。

彼女たちがマスカである事を証明しない限り、フランを人殺しにしかねない。


「だとしたら、母親か?」


「アマリリスさんではないでしょう。彼女にとってマリーが健康になる事にメリットは無い」


マリーの検査結果が良好で、退院手続きを取ろうとしただけで取り乱したアマリリス。


そんな彼女がマリーをマスカにして不死身になどするだろうか。

すると、件のアマリリスは、「あの……」と消え入る声で呟いた。


「……夫かもしれません」


「ダフニーさんが?」


「はい。主人はマリーの医療費がこれ以上かさむのを嫌がっていました」


「そんな……勝手な」


マリーは長らく入院していた。当然、医療費もかかる。


彼女の病気に依存しているアマリリスはともかく、父であるダフニーにとっては金のかかる娘であった。と、アマリリスは考えた。


「だとしてもおかしい。マリーの病気を治したいだけならわざわざ双子を入れ替える必要があったのか?」


「双子?」


ラルファが、どういう事だとリュクレーヌに尋ねる。


「マリーちゃんには双子の姉妹がいるんです。カレンちゃんって言って……」


アメリアが説明しようとする。すると


「そんな子はいない!」


説明を遮るように、アマリリスは叫んだ。

だが、フランは吹雪のように冷ややかな眼差しを彼女に向ける。


「アマリリスさん……とぼけても無駄ですよ。僕たち、彼女に会ったんですから」


「アンタどうしてそこまでカレンの事をのけ者にするんだ?」


リュクレーヌもアマリリスに対して厳しく問う。

そう、アマリリスが存在を無い事にするほどカレンに冷たい理由。


「あの子、邪魔なのよ!私には、マリーが居れば良いの!マリーは私の事を必要としてくれる!なのに、カレンは……全部一人で」


カレンは、健康で、自分の事はある程度自分で来てしまう子供だった。

マリーのように助けが必要な訳でない。


そんなカレンの存在は、母親としてのアマリリスを否定しているようで、そう感じた彼女は、カレンの存在を無視していた。


「病気で自分を頼ってくれるマリーちゃんの方が可愛いって事か……」


「その病気も完治しちまったけどな」


事実。マリーはもう病気でない。

カレンと同様に、マリーの助けを必要とはしない。


それよりも、二人とも、マスカという巨大な爆弾を抱えているが。


「カレンに会わせろ。今のアンタに出来る事はそれしかない」

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