探偵の心配
アマラ軍は軍隊で寮生活と来たものだ。
特にフランは軍の中でも若いため、周りは皆年上。となれば嫌でも処世術が身に付くわけだ。
フラン自身、あまりそれを苦としなかったようだが、それもまた気遣いが出来る素質だ。
「でもさ、フラン自身がしたい事ってよく分かんないんだよな」
「え?」
もう一度、リュクレーヌがフランの方を見て言う。
フランは振り向いて聞き返した。
やりたい事って、どういう事?と言った意味を含んだ瞳で。
「あぁ、確かに」
ブラーチも同調した。
生活を共にしていなくても、なんとなく、フランの特徴は分かっていた。
そんな、リュクレーヌの言う事も理解できた。
「飯も、いつも俺に何食べたいか聞くじゃん?自分が食べたい物作った事あったかなって……」
「そうだっけ?」
心当たりがないようだ。フランはひとまず、一昨日の夕飯の事を思い出す。
「リュクレーヌ、今夜なにがいい?」
たしかに聞いている。
「これ美味しい?じゃあ明日の朝はこれまた使うよ」
たしかにリュクレーヌの好みに合わせている。
「お昼は何にしようか。あぁそういえばパスタ食べたいって言ってたよね?今日食べる?」
たしかに、合わせている。
言われてみれば、その通りだ、とフランは納得した。
するとリュクレーヌは「うーん」と唸る。
「周りに合わせられるところは良いんだけど、我慢してると言うか……自分がしたい事抑え込んでないか心配になるんだよな」
心配。
自分のやりたいことをやっているのだろうか。気を遣える事はいいが、共同生活を送る上でもやもやとしたストレスを抱えていないだろうか。
フランと毎日顔を合わせているからこそ、リュクレーヌは心配だった。
だが、この特徴はおおざっぱなリュクレーヌと対照的なものだ。
きっと、心配になるのはリュクレーヌの基準で考えているから。
きっとそうだ、そうに違いないと思ったフランは、鋭いツッコミを入れた。
「いや、それはリュクレーヌが自由奔放なだけでしょ」
「なっ!」
「確かに。それは断言できる」
「ブラーチまで!」
二人の指摘に「せっかく心配したのに!」と言って、リュクレーヌは頬を膨らませた。
料理の皿を流し台に下げて、テーブルの上には三つのカップだけになった。
「ところで、ブラーチさん。今日は何かあったの?」
フランは、ブラーチの方を純粋な瞳でじっと見た。
きっと、何か話があるから来たのだろうと思っていたからだ。
「何か、とは?」
「だって、ご飯食べに来ただけって事はないでしょ?ブラーチさんなら用があるから来るって感じだと思うんだけど」
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