助手の気遣い

 

「ごちそうさまでした!」


「お粗末様でした」


食事後、ブラーチは口をナフキンで拭きながら、ふと、フランに問う。


「どうしてこのような調理法をしたんだ?」


「え?いろんな味や調理法を楽しんで欲しいと思ったから、かな?」


「何故?」


「うーん、ブラーチさん、鶏肉が好き、って言って献立は特に指定しなかったかから、鶏肉っていう食材が好きだと思ったんだ」


たしかに、リクエストは鶏肉のフルコース。焼き鳥でも、フライドチキンでもなく、鶏肉という食材の指定だった。


「だから、特定のメニューにするよりも、鶏肉をいろんな楽しみ方が出来る料理の方が良いかと思って……」


「なるほどな」


ブラーチは満足そうに笑う。


「あっ、苦手なものあったらごめんなさい!ちゃんと聞いておけばよかったね」


だが、フランは気を遣ったのか、謝った。

その様子を見てリュクレーヌが笑いながら、フランの肩に手を置いた。


「あぁ、大丈夫だよ。コイツ、鶏なら何でも好きだから!昔鳥刺しで当たったけどな」


「えぇっ!?」


「余計な事を言うな」


鶏肉を、調理せずそのまま食べたらどうなるのだろう?と疑問に思った幼いブラーチ少年は好奇心のまま行動に移した。

そして、当然のように食あたりを起こしたのだ。


「それにしても、フランは本当に気が利くな」


幼い頃の過ちを暴露され、居心地の悪いブラーチは話題を転換しようとした。


「いやぁ、そんな事は……あ、コーヒーのお代わり要ります?」


「あぁ、ありがとう」


フランはブラーチの持つカップに黒い液体を注ぐ。

紅茶にはない、深みのあるアロマが漂った。


リュクレーヌフランの方をまじまじと見ながら、「たしかに」と口にする。


「フランはたまに一言多いけど、気は利くし、戦闘時も状況判断とかうまいなって思う」


「え?そ、そうかな」


冷静に、フランの長所を述べた。

気が利くから助手として家の事も任せられる。

リュクレーヌが家事をできないのもあるが。


それだけではない。マスカとの戦闘時も、隙をついたカウンター攻撃や、相手の動きを先読みして攻撃をかわすのも巧い。


機関銃を扱うクレアと比べれば、攻撃力自体は高く無い。


だが俊敏さや状況判断がカバーしていて、小さなスチームパンク銃を活かした、機動力の高い攻撃が得意だ。


「アマラ軍の時も、年上の人に囲まれていたから気を遣ってたからかな」


「あー、そういう事か!上下関係ってやつ!」


「慣れたらそこまで厳しくなかったけどね」

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