浮気の真相

全てを明かされ、ミーナ──いや、アレフレッドは自白を始めた。


「そうだよ……ミーナはもうとっくにこの世に居ない。貴方が妻だと思っていたのは俺だよ」


「お前が……アレフレッド……?」


オスカーもようやく、ミーナがアレフレッドだという事を受け入れた。

事件以降、今日まで共に生活していたのはミーナではなく、アレフレッドだと。


「なのに!どうして浮気なんてしたんだよ……オスカー!」


「それは!」


訴えかける様に言ったアレフレッドがオスカーに掴みかかろうとする。


「アンタの事が怖かったんだよ」


が、リュクレーヌが間に入り、睨みつける様に言う。


「こわ……かった?」


「そうだ。オスカーさんは言っていた。火災事故以降、ミーナの雰囲気が随分と変わったと」


オスカーが言っていた雰囲気の変化、それは──


「三年間生活を共にした妻だからな、魂が変化したことに第六感で気づいたんだろ」


魂の変化だった。

その魂の変化に恐怖したオスカーの浮気という手段に、アレフレッドは嫉妬した。

せっかく、オスカーの妻になれたのに、何が駄目だったのだろうと。自問自答をしながら。


「で、アンタは今度は手を出された娼婦に嫉妬し、殺して皮を被った。何度もな」


アレフレッドは自分がマスカだという事を思い出した。

──そうだ、今度はこの女に憑依すれば。

悲劇は何度も起きた。


「それが、この連続失踪事件の真相だ」


娼婦が消えたのも、憑依した皮を捨て去っていたからだと。

全てが解き明かされた。

謎は解けた。後は、マスカを乖離するだけだ。

できるだけ穏便に済ませるためにリュクレーヌはアレフレッドに声をかけた。


「もういいだろ、アレフレッドさん。こんな事をしても空しいだけだ」


「そうだな……」


アレフレッドは俯いた。だが、その視線は自身の胸元。そして腕が動く。


「っ!」


仮面を付ける気だ、と分かった。フランは即座に銃を取り出す。


「もう憑依はさせない!」


躊躇している暇はない。引き金を引き、仮面を撃ち抜いた。


「うぅっ!?あああっ!」


そして、仮面を貫通した弾丸はアレフレッドに命中し、乖離が起きる。

ドレスの様な衣服を纏った黒いマネキンのマスカだ。


自分の姿の変異にマスカは戸惑っていた。


「ちっ……どうなってるんだ」


「強制的に、乖離をしました。貴方はもう誰にも憑依できない!」


次から次へと転生を繰り替えた魂も、乖離が起きてしまえば最後。このまま、魂を解放するしかない。


「みたいだな……でも」


往生際悪く、マスカが選んだ手段は──


「きゃっ」


「俺はまだ死ぬわけにはいかないんだよ!」


クレアを人質に捕る事だった。


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