未定と予定
オスカーの事情聴取が終わり、再び事務所はフランとリュクレーヌの二人きりとなった。
「リュクレーヌ、これからどうするの?」
今後の動向をフランは問う。
だが、リュクレーヌは腕を組み悩まし気にした。
「どうするかなぁ……」
「えぇ……」
未定。
それが答えだった。
だが、その理由は明らかだ。
「大体、未だに分からない事が多すぎるんだよな」
「まぁ、確かに……倒れた娼婦が消えた事と、オスカーさんの事件と……」
この事件は不思議な部分と謎が多すぎる。
まだ、倒れた娼婦がマスカになって復活したとかならば、話は別なのだが。
マスカについての関連もミーナがファントムに接触していたかもしれないという事以外は曖昧なものだった。
それに──
「なぁ、ミーナさんは本当に、娼婦街に行ったオスカーさんをつけていたのかな」
「え?そうなんじゃないの?」
「だったら今日は、この事務所までつけてくると思わないか?」
フランの言うようにオスカーの浮気を疑い彼を追って娼婦街まで行っていたとする。
だとすれば、オスカーが探偵事務所に呼び出された今日は、探偵事務所の近くまで尾行をするミーナが居るはずだ。
「あ、確かに……でもそれっぽい人は居なかったね」
だが、オスカーを出迎えた時にミーナらしい人物は居なかった。
念のため辺りを気にしたが、人の気配すら感じなかった。
「なら、本当に、娼婦街へ用事があったのかもしれない」
「でも、聞き込みに行った時もミーナさんは居なかったよ」
そう、娼婦として働いているわけでは無かった。旦那を追って居るわけでもない。
──だとしたら、ミーナが娼婦街に行っていた理由は?
リュクレーヌは腕を組み、暫く頭を悩ませる。そして、ため息と共に苦渋の決断を吐いた。
「……行ってみるか」
「え?」
「夜の娼婦街」
どこか嫌そうに目を細めてリュクレーヌはため息をついた。
フランは対照的に目を丸くした。
「え、えぇっ!?リュクレーヌ大丈夫なの!?」
「正直気は乗らないけど、仕方ないだろ」
男女のあれこれが苦手なリュクレーヌとしては不本意ながらの決断だ。
今ある謎のうち、ミーナの謎を解明するのが一番安易で確実である。
その為ならば仕方ない。というように。
「う、うん……じゃあ、行こうか」
不安をかかえて重い足取りで二人は事務所を出た。
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