娯楽と勉強
「そうなんだ……でも好きになった人の性別で罪になるって少し可哀そうだよね」
しかし、罪に問われるのは変わらない。
恋愛という感情の向けられる方向で、感情が流刑に処されるほどの罪になる。
自分達には縁のない話ではあっても、優しいフランは同情した。
「法律には理不尽なものもあるからな……というか」
「?」
リュクレーヌはフランの方をじとっと厳しい目で見る。
「フラン。お前アマラ軍だったのに法律からきしってどういう事なんだ?」
「えっと……僕、実技だけで点数稼いでいたから、座学の方はボロボロだったんだよね」
アマラ軍は警察組織と同じように訓練がありその中にはもちろん座学もあった。
だが、フランは座学より実技の方にステータスを全て振ったと言っても過言でない程であった。
なので、この国の法律や仕組みなどの社会常識は平均以下の成績なのだ。
「えぇ……」
「何?」
リュクレーヌの視線が今度は冷ややかなものになる。
それでもフランは気にしない様子。
「いや、別に……まぁ、俺も勉強は元々苦手だったんだよ」
フォローのつもりで自分も同じであったと告げる。
「そうなの?リュクレーヌが?」
「あぁ、子供の頃はチェスとかカードとか絵とか歌とか楽器とか……とにかく、楽しい事しかしてこなかったよ」
「あ、なんか想像つくかも」
勉強なんかよりも娯楽や遊戯などのほうがよっぽど好きそうだ。
事実、リュクレーヌは多趣味で多くの事は簡単にこなしてしまう。
家事以外は。
だとすれば、勉強をそっちのけにし、娯楽に走っていた過去があるのは安易に想像がつく。
「弟はめちゃくちゃ勉強できてさ。娯楽では負けなかったんだけど勉強ではいつも負けていたよ」
リュクレーヌは頬を掻き、照れくさそうに言う。チェスやカードでいつも勝っていた弟に勉強では負けていた。
しかし、今はデスクの後ろの本棚にぎっしりと入った『難しそうな本』を難なく読む。
だとすれば、どこかで勉強嫌いを克服したという事だ。一体どうやって?フランは訊くことにした。
「でも、どうして勉強できるようになったの?」
「勉強も娯楽みたいなものなんじゃないかって思ったら楽しくなったんだよ。楽しめたら自然にできるようになった」
単純な話だった。勉強を勉強と思わない。
ゲームの一種だと思って取り組むことにした。
気の持ちよう。たったそれだけで苦手としていた勉学を得意に変えてしまった。
「なるほど、楽しむかぁ……」
「そうそう。何事も楽しまなきゃ損だぞ!」
自分にもできるだろうか?と不安そうなフランを煽る。
「と、いう訳で。はい」
そして、持っていた『イギリス法』の本を手渡した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます