探偵の気遣い

「その一人……つまり、デルさんの躯に入っていた魂って」


「恐らく……いじめられっ子のラウエル……害虫駆除の依頼人だろうな」


依頼人自ら、デルのマスカとなり害虫駆除の手伝いをしていた。「そんな事ができるの?」とフランが問う。


「彼はマスクを装着したあと、本物のデルに殺された。そして、その本物のデルもマスクを装着して、自殺した。」


依頼人はマスクを付け、転生の準備をした。一方、デルも同様に転生の準備をしていた。このとき二人がお互いの躯に転生すれば、入れ替わる事ができ、二人の害虫駆除人が生まれる事となる。


「つまり、この連続殺人事件の真犯人は、デルの魂を持ったラウエルのマスカだ」


フランの顔が青ざめる。


「リュクレーヌ……一つだけ確認させて」

「なんだ?」


「あの子たちを殺したのは、さっきのマスカ?それとも真犯人?」


「……恐らく、真犯人だろうな。血文字の筆跡にも変わりがない」


「そう……なの?」


「死体を潰したのだって、ラウエルの躰に憑依したことをバレないようにするため……」


次の瞬間、フランはリュクレーヌの胸倉に掴みかかる。


「どうして、嘘を言った!」


あのマスカが復讐鬼だから。だから仕事をしたのに。それなのに嘘だった。フランは嘘を吐かれ、仕事をさせられた事が許せなかった。


「……お前が辛いと思ったからだ」


あのマスカは真犯人じゃない。ましてや誰も殺していない。そんな事実を告げて、フランが平常心で戦闘を遂げる事はできないだろう。リュクレーヌは気を使って、嘘を言っていた。


「っ……そんなに僕は頼りないかよ!」

「じゃあ、本当の事を言って戦えたか!同情しなかったと言えるのか!」

「馬鹿にするな!僕だってアマラだ!」


嘘なんて必要ない。そんなもの無くったって。

倒せたか?フランは自問自答する。迷ったからこそ、感情的に叫んだ。


一方、リュクレーヌはため息をつく


「……もういい、俺は寝る」


そう言って、寝室へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る