その魂は何処へ
「……そんな」
「ファントム……お前!」
やっている行動は同じ破壊でも、救済もへったくれもない無慈悲な行動。リュクレーヌはファントムに向かって叫んだ。
すると、ようやく二人の方に顔を向けて、ため息をつく。
「最近、街中でボクの作ったマスカを乖離前に壊している奴が居ると思ったら……」
そして、リュクレーヌとフランの方を見て、怪しげな事を口走る。
「その顔とその銃……君たちだったとは」
「何?」
意味が分からずにリュクレーヌは問う。
「まぁいいや。君の依頼は僕が遂行してやったよ」
しかし、ファントムははぐらかし、その場から霧とともに消え去った。
「あっ、」
「待て!」
二人が追おうとした時には遅かった。ファントムは跡形もなく消え去った。
まるで、幻影のように。
◆
胸糞の悪い事件だった。
夜が明けて、事務所に帰っても二人の心は晴れないままだった。
「ファントム……本物だったね」
「……あぁ」
「デルさんの魂、どうなっちゃったんだろ」
「……」
魂をこの手で救えなかった。フランにとって任務失敗を意味するこの出来事は彼を俯かせる。
ただ、リュクレーヌにとってはそれよりも今のこの重苦しい空気が不快であった。
「そういえば、朝飯食ってなかったな。軽いものでいいから食べよう」
「……」
少しでも心に残した魚の骨の様な不快感を癒したいと思って紅茶と共に朝食を食べることにした。
フランは黙り込んだ。再び空気が重くなる。
「あーもう!この話やめるぞ!考えても仕方ないって」
「でもっ……」
「はい、今からは別の話!」
強制的に話を転換させる。急にそんな事言われても困るなぁ、とフランは戸惑う。
「……別の話って言われても……あ」
「お、なんかある?」
「リュクレーヌさぁ……あの時は軽い説教で済ませたけど」
「……ん?なんか嫌な予感」
あの時。花畑でフランが助けに来た時の事だろうか?すぐに分かったものの、説教という言葉に良い事ではないなと感じとる。
「自分の命投げうつような作戦は本当にやめてよね!今回は間に合ったものの、ギリギリだったんだから!」
さっきまで落ち込んでいたフランは怒りの表情を見せる。リュクレーヌは「あぁ……矛先がこっちに向いたぁ」と話題を変えた事を後悔した。
「もっと自分を大切にしてよ!」
「はいはい」
「はいはい……って、ちょっと!ちゃんと聞いてる?」
「大丈夫だよ」
適当にはぐらかしてしまおうかと思ったけど、安心させたい。そんな思いから、リュクレーヌは断言した。
「俺は死なないから」
そして、まるで根拠でもあるように優しい笑顔を見せた。
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