黒幕の登場

「僕は、マスカを救うために壊しているんだ」


「何?」


マスカが訊く。

破壊と救済。快楽の為に命を奪ってきた彼にはそれが繋がる意味が分からない。


「君たちはマスカになって一ヶ月もしたら自我を失ってファントムの操り人形として人殺しの兵器になる」


破壊と救済を繋げる事実を告げる。するとマスカは「馬鹿な……」と言ってみるみると狼狽える。


「そんなはずは……僕はこれからも害虫駆除人として依頼された罪人を裁……」


言いかけた時だった。天から閃光と共に、何かが落ちてくる。落ちたものは、マスカの脳天に見事に直撃した。


「残念でした」


直撃したのはマントを装い、顔を仮面で隠した青年。声は、壊れたおもちゃの様。顔を隠している仮面が声までも変えているのだろうか。


一同が「誰だ!?」と訊くまでもなく仮面の人物はすくっと立ち、話し出す。


「それは無理だよ。この坊ちゃんが言うようにキミにはボクの奴隷として殺人兵器になってもらうんだ」


キミと差したのは目の前のマスカ。次の瞬間、マスカの脳天を拳で殴る。今度は意図的に力を込めた攻撃だ、マスカの悲鳴と共に、硬い機械仕掛けの甲羅がひび割れる。


「まさか……」


ボクの奴隷。そのワードから導き出される、この仮面の男の正体。


「……ファントム!」


マスカの生みの親。悪魔の商人ファントムに違いない。


顔は分からないがマスカを自分の道具のように扱うこの態度。

思わぬ遭遇にリュクレーヌとフランは身構える。


「へぇ、キミは随分と殺してきたんだなぁ」


しかし、ファントムは二人の様子には目もくれず、マスカをいたぶりつくしていた。


「私刑執行の正義の味方ねぇ……残念ながらそんなのキミたちには要らないんだよ」


「ま、待って!殺さないで!お願いします!!」


直感的に、殺される。マスカもそんな事は分かっていた。反射的に命乞いをする。


彼自身が葬ってきた罪人と同じように。


「それに、キミにとって、キミは正義の味方のつもりかもしれないけど、僕にとってはそうじゃないからね?」


「たっ……ずげ……ぐぅっ!?嘘だ!僕が、報いを受けるなど……っ」


ファントムは踏みつけていた傷口を靴でぐりぐりと詰る。


「おい!何をする気だ!」


リュクレーヌの声など聞こえないように無視をして。


「ごめん。キミの代わりは居るから」


命乞いなどお構いなしにファントムはおもちゃでも壊す様にとどめを刺した。


「うわあああああああああっっっ!!!!」


スイセンの花畑に断末魔が響く。ファントムは満足そうだ。


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