居残り捜査と帰ってきた人物
解散後、ラルファ達はそそくさと帰っていった。
夜は冷える。早く家に帰って温まりたいのだろう。残されたのはリュクレーヌとフランの二人だけ。
「……じゃあ、僕たちも帰ろうかリュクレーヌ」
しかし、フランの誘いにリュクレーヌら首を振った。
「いや、俺とお前は居残りだ」
「えっ!?どういうこと」
居残り?というフランの問いに、リュクレーヌはニッと笑って断言する。
「犯人は、必ずここに戻ってくる」
「犯人……が?」
一体なんのために?わからず仕舞いだが、きっとリュクレーヌの事だから策があるのだろう。
作戦の延長戦に、いや、ここから始まる本当の作戦に乗ることにした。
それから、三十分程、二人で引き続き張り込みをした頃だろうか。
「おっ、もう戻ってきた。案外早かったな」
リュクレーヌの読み通り、一人、帰ってきた人物がいた。
「……そんな!」
帰ってきた人物、すなわちリュクレーヌが犯人だと疑う人物は、何かを持った捜査官のデルだった。あのデルさんが、なんで?と、フランは彼の動機も理由も全く見当がつかずに動転する。
「フラン、お前はうちの電話からラルファ刑事に連絡しろ。そしてすぐに戻ってこい」
「あっ!ちょっと!」
まだ気持ちの整理がつかず混乱しているフランを置いて、リュクレーヌはデルの前に立ちはだかる。
「デルさんじゃないか。こんな所に戻って来て、何の用だ?」
「あぁ、探偵さん。すいません、ちょっと忘れ物しちゃって」
一瞬驚いたものの、平常心を保った笑顔でデルが笑う。リュクレーヌは「……ふうん」と呟きながら、視線を彼の手の方にやる。
「手に持っているものを見せてもらおうか」
「嫌、だと言ったら?」
「……力ずくで見せてもらうまでだ!」
有無を言わさず、デルに掴みかかる。初動が早かったのか、デルは避けきれず、あっけなく手に持っていた紙を奪われてしまう。
すぐさま紙に書いている文章に目を通す。
「リュクレーヌ!!」
そこへフランも駆けつけた。
呼びかけられて、そちらを振りかえる。そして、デルから奪った紙切れを渡した。
「……ほら、フラン、読んでみろ」
フランは紙に書いてある文章を声に出して読んだ。
「……先ほどのリュクレーヌ・モントディルーナに関する依頼は罠です。彼を殺してはいけません……これって!」
「あぁ、こいつは連続殺人犯と繋がっていた!」
囮作戦の事を害虫駆除人に伝えようとポストに手紙を入れるために、デルは戻ってきた。真犯人との繋がりを自ら証明してしまったのだ。
「返せ!」
「嫌だね!立派な証拠品だ!」
フランから手紙を奪おうとするデルをリュクレーヌが取り抑えた。
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