依頼用ポストは虫のように
「あっ!」
ヒリついていた空気が温まったのも束の間、ポストに異変が生じた。
「ポストが、動いている!?」
「何だと!?」
依頼書を入れたポストがガタガタと音を立て震えている。何か不気味な様子だ。
もしかすると、集配人が来るかもしれない。全員、辺りを警戒する。
しかし、誰も来る気配はない。いったいどういう事だ?とリュクレーヌが眉間に皺を寄せる。
次の瞬間、ポストが、ミシッと異音を立てて、一部が壊れる。壊れた場所からは、虫の様な羽が生えた。すると、ポストはすぐさま羽ばたき、宙に浮き、一目散に飛んでいった。
「な、なんだこりゃぁぁぁぁっ!!!!」
ラルファは動転する。リュクレーヌはというと「うわぁ、気持ち悪」と苦い表情。
いや、こうしてはいられない。
「とにかく追うぞ!」
「はい!!」
ラルファと捜査員たちは空飛ぶポストを追跡した。
「……なるほどな。無人とは考えていなかったなぁ」
「感心している場合!?行っちゃうよ!?僕らも追おう!」
フランはリュクレーヌの手を引いて、ポストを追おうとした。だが、リュクレーヌは、動こうとしない。
「あー、追わなくてもいい。ありゃ無理だ」
「そんな……って、え!?ちょっと、ポスト返ってきた」
「相当な速さだったもんな」
先程旅立ったはずの虫の羽を生やしたポストはあっという間にもとの位置に戻ってきた。無事、犯人のもとに依頼書は受理されたのだろう。
それから、数分後、息を切らしながらラルファと捜査官達は帰ってきた。
「はぁ……見失いました……」
「ちくしょう!せっかくしっぽを掴めたと思ったのに」
犯人の手がかりすら掴めなかった。あと少しだったのに。作戦は失敗に終わった。
しかし、リュクレーヌは余裕だ。それどころか、とんでもない提案をする。
「じゃあ、皆さん。今日はこれにて解散にしましょう」
「はぁ!?何言ってるんだよ!?」
「そうだよ、リュクレーヌ!せっかくここまで来たのに……」
あと少しだったのに。もしかしたらもう一度待ってみれば、今度こそ犯人の居場所を突き止められるかもしれない。
食い下がる捜査官たちとフランに「まぁまぁ」となだめるようにリュクレーヌは言った。
「急がば回れっていうだろ?どうせ、あの手紙が犯人の元に渡れば奴は俺の事を狙いに来る」
「そりゃ、そうだけど!」
「というわけで!おつかれさまでしたー!はい、解散!」
作戦は、強引にも強制終了されてしまった。
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