教室への緊急招集
現場となった教室とは離れた、古い空き教室。
そこに、先ほどまで居た関係者が招集された。
窓から差し込むのは橙色の黄昏を意味する光へと変わっていた。
「お集まり頂きありがとうございます」
開口一番はお礼だ。
「もしかして、犯人が分かったんですか?」
そんな事はお構いなしに、シフが訊く。
「そうですね……犯人は……」
ゴクリ、と唾を飲む音が聞こえる。あれだけの手掛かりで、まさか、犯人が分かってしまったのか。
「分かりません」
否。答えられたのは犯人不明。
思わず、全員「は?」と頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。
「だってー。無理に決まってるじゃ無いですか。死体も潰されている。手がかりも血文字しかない。たったこれだけで犯人分かったりしませんよ」
確かに、そうだ。そうだけど。あの自信満々の態度はどう考えたって、分かっている人のものだった。
シフが立ち上がる。ずかずかとリュクレーヌの元まで近づき、胸倉をつかむ。
「ふ、ふざけるな!」
「ふざけてませんよ?」
怒鳴られても、リュクレーヌは至って平常心。
それどころか、シフを止めようとするデルとタブの方が焦っていた。
「犯人は分からない」
「だから、それがふざけて」
「今は、ね」
シフの言葉を遮るようにリュクレーヌは意味深な事を口にした。
「今……は?」
「えぇ、僕がここに皆さんを集めたのは、犯人逮捕のための作戦にご協力頂くためです」
「どういう事だ?」
ラルファが表情を歪める。
作戦。この探偵には何か考えがあるのだろうか?
「リュクレーヌ、一体どういうこと?」
「お前も聞いただろ、害虫駆除の手口」
「う、うん……」
「犯人は、律儀な事にポストに入った依頼を受けている。これを利用すればいいのです!」
依頼。利用。フランの脳裏に、一つの可能性が過る。
「……まさか!囮捜査?」
「あぁ、その通りだ」
リュクレーヌは、にこりと笑顔を見せた。
だが、それを聞いたラルファと捜査官たちは、驚きのあまり声を荒げた。
「囮捜査ぁ!?」
「えぇ、偽の依頼書をポストにいれておけばいいのです。すると、犯人は自ら依頼書を取りに来るはずですから」
リュクレーヌの作戦はこうだ。
この中の誰かを殺してくれと言った内容の依頼書を件のポストに入れておく。
依頼を受けるという事は、誰かしらがポストのなかの依頼書を取りに来るという事だ。
だとしたら、依頼書を取りに来た人物を捕まえて、何処へ持っていこうとしたのかを聞き出せばいい。
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