自責の念と証言

「……誰かにそう言われたんですか?」


ぽつり、とタブが訊く。


「え?」


その声にベルは振り返った。


「……被害者の、保護者の皆さんに」

「どうして……」


は自分の心を見透かされて再び涙を零した。

事件の被害者であるいじめっ子たち。その保護者から酷く責められた。

どうしてこんな事になったのか。担任がきちんと見ていないから。子供たちと向き合っていないから。


自分の子供のいじめであるにも関わらず、理不尽な責任転嫁をされて、心をぐしゃぐしゃに潰されてしまったベル。

そんな彼女に大丈夫と語り掛ける様に捜査官たちは優しく声をかけた。


「いいか、この事件で悪いのは、貴女じゃない。最も悪いのはこんな事件を起こした犯人だ。」

「貴女は悪くないよ。だから、泣かないで」


いじめの実態などはともかく、この事件自体は連続殺人犯であるマスカの犯行。彼女が犯人であれば話は別だが、被害者を駆除したのは、私刑を下した犯人だ。


「やるじゃん、捜査官ズ」


その様子を眺めながら、リュクレーヌは感心した。

あれ程に泣いていたベルはなんとか泣き止んだ。


「でも、でもいじめがあったから、あの子は害虫駆除に……」


聞き覚えのある単語。

この事件のキーワードをリュクレーヌは反芻するように呟く。


「害虫……駆除」


しかし待ってほしい。なぜ、彼女が害虫駆除の事を知っているのだろう。


「教えてください害虫駆除の事を」


この、連続殺人事件の血文字の事を。


「……その、生徒たちが言っていたんです。害虫駆除人に会って来いよって」

「生徒?」

「ランサ君たちが、ラウエル君に……」


ランサたちとラウエルの関係はいじめっ子といじめられっ子。だとしたら。


「それって……」

「あ、いや。その時はいじめだとは思いませんでした。だって……」


「だって?」


「ラウエル君、すごく楽しそうだったから」


曰く、いじめだとは思えないほど、心からの笑顔。


「どういう事だ……?」


ベルから告げられた理由はより一層謎を深くした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る