被害者の担任
背後から甲高い女性の悲鳴。全員すぐさま振り返り、視線を向ける。
すると、彼らの視線の先には教室の前で座り込み、嗚咽する女性の姿があった。
「うぅっ……私のせいで、みんな……こんな姿に」
私のせい?事件の関係者だろうか。リュクレーヌは女性に近づこうとする。
「何勝手に入ってきているんだ!ここは立ち入り禁止だと言っただろ!」
が、先にシフが前に出て、彼女に立ちはだかり、強い口調で言う。
彼女は一体何者なのだろう。リュクレーヌはタブに尋ねた。
「この方は誰?」
「ベル・チャート、このクラスの担任です。被害者達の……」
「あぁ……そういう」
彼女は被害者たちのクラスを受け持っていた担任だ。
五人の教え子の命を奪われ、変わり果てた姿にされた。挙句の果てには現場にも入れてもらえない。
現実に悲観し、泣き喚く事しかできない彼女にリュクレーヌは提案する。せめて、事件を解決させるための一歩を踏み出すために。
「チャート先生。よければお話を聞かせてくれませんか?」
「あなたは?」
「名探偵です。貴女のかわいい教え子達を殺した犯人を探しています」
ベルは困惑しながらも、差し伸べられた手を取る。
「……わかりました。私でよければ」
「ご協力ありがとうございます」
柔らかく笑い、事情を聞くことにした。
となれば、まず、最初の質問。彼女の言った言葉が引っかかる。
「さっき言っていた、私のせいっていうのは……」
彼女には自責の念があるようだ。もしかしたら、今回の事件の重要なキーマンかもしれない。
「はい……私がクラスのいじめに気づけなかったからこんな事に……」
いじめ。確かに、今回の事件はいじめっ子たちが害虫として駆除された。
「それと今回の事件は、まぁ、無関係では無いけれど」
いじめが今回の事件に関係ない事はない。だが、それがベルのせいか?と問われたら完全にはそうではないだろう。
「いえ!私のせいなのです!私が!教師失格だから」
なぜ、そこまで自分を卑下するのだろう。リュクレーヌは困り果ててしまう。
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