童顔の捜査官と探偵の現場検証

「トイレでしたらこちらですよ」

「あぁ、どうも……て、えっと、貴方は?」


当たり前だが初めて見る顔。童顔だが年齢はリュクレーヌより年下でフランよりは年上、と言ったところだろうか。

服装から警察官であるという事が分かるが、何者だろう。リュクレーヌは男に名前を聞く。


「はじめまして、私、捜査官のデル・スペルビアです」

「どうも、名探偵のリュクレーヌ・モントディルーナです」


二人は自己紹介の後、手を差し出して「よろしく」と握手をする。

ふと、デルはリュクレーヌの背後に目をやる。


「そちらは……」


視線の先には今にも吐きそうなグロッキー状態のフラン。デルは彼を心配そうな様子で見つめた。


「あぁ、助手のフランです。この通り、死体が苦手で」

「そういう事でしたか……僕がトイレまで案内しましょうか?」


場所を知っているなら自分が案内した方が良いだろう。と、最善策を考えたデルは、フランを案内する事にした。


「本当ですか?じゃあ、よろしくお願いします」

「いえいえ、お安い御用です」

「うぅ……」


一刻も早く捜査に取り掛かりたかったリュクレーヌも、ちょうどよかった、とデルの提案に乗った。

 


さて、捜査開始だ。リュクレーヌは現場へと足を踏み入れた。


「これは……ひどい」


写真で見た通りだ。現場となった教室はあたり一面、五人分の血が飛び散っている。

惨たらしい事に、内臓や皮膚といった死体だったものが 細切れの肉片として散乱している。


骨も粉々に砕かれているが、白さはなく、血の赤に染められていた。


そしてやはり、黒板には赤い字で「害虫駆除」とあった。


「ラルファさん。事前に教えてくれてありがとう」


この惨状、フランが見ていたら気絶していたかもしれない。考えただけでもゾッとする。事前に現場の状況を知っていたのは大変ありがたい事だった。


「礼はいい。それで……この現場からわかる事は」


リュクレーヌは現場を見回しながら「そうですねぇ……」と漏らす。


「まず、人間の仕業では無いでしょう……って事くらいですかね」

「くそ、やっぱりそれくらいしか分からないか」

「なんせ死体がこの状態ですからねぇ」


調べるといっても、残された手掛かりがあまりにも少なすぎる。


現状をつくったのは生身の人間ではないだろう。

これくらいしか、今は分からなかった。

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