死因不明と現場写真

あぁ、そうだ。死因、死因を聞こう。とリュクレーヌは尋ねた。


「それで、この事件も銃殺だったのか?」

「いや……この事件だけは違う」

「じゃあ、この事件の死因は……」


銃殺ではないのならば、何だ。リュクレーヌはラルファに詰め寄りながら訊く。


「死因は……分からない」


ラルファの返答に、リュクレーヌは鳩が豆鉄砲を食ったような表情を見せる。


「分からない?」


一体どういう事だ?と訊く前に、ラルファは一枚の写真を懐から取り出す。


「これを見てくれ」


そして、取り出した写真を机上に提示した。


「写真?……こ、これは!」

「うっ……」


ラルファが見せたのは事件現場となった教室の写真。

銃殺なんて生易しいものじゃない。教室の辺り一面には血という血が飛び散っていて、児童……だった者たちは、ぐちゃぐちゃに潰されており、小さな肉片となり、跡形もない。骨も、臓器も全てを粉々にされて、誰が誰だか、いや、これは本当に人間だったのだろうか?と思わせるほどの惨状である。


ここには、死体なんてない。あるのは散り散りとなった人間だったものだけだ。そしてやはり、黒板に「害虫駆除」とお決まりの血文字が描かれている。

あまりもの惨状に、フランは餌付いて、トイレへと駆け込んだ。


「こりゃひどい……死因も分からないわけだ」


「あぁ、酷いありさまだ。出血死……だと思うんだが、凶器も出てこない」


リュクレーヌは何故この事件について依頼をされたのか、納得した。これほどに酷い状態の犯行を凶器無しでやってのけるとしたら、それは──


「人間の犯行とは、思えないな」


「そう、だから依頼をしたい。マスカの事件として。オペラ座の事件を解決した腕を買って」


マスカの犯行。他の刑事ならば、他国の兵器が小学校の特定の生徒だけを狙うなんて、と嘲笑っていただろう。

しかし、オペラ座の事件でその有様を見たラルファだからこそ、疑いの目をマスカに向けた。そして、マスカ事件を専門に取り扱うルーナ探偵事務所を訪ねた、という訳だ。


だとしたら、することは決まっている。


「なるほど……そういった事ならお任せください!」

「……ご協力、感謝する」


祝、ルーナ探偵事務所、初めての依頼を受ける。事件が事件だけに、祝うのは不謹慎であるが。


だが、せっかく受けた依頼だ。しっかりと調査をしなければ。


「いえいえ、それでしたら現場に行きましょう」


まずは事件現場で調査をしなければいけない。だが、その前に、とリュクレーヌはトイレに向かう。


そう、フランの様子を見に。


「おい、フラン大丈夫か?」

「う……うん、大丈夫。現場ではできるだけ見ないようにする」


全然大丈夫そうではない。真っ青な顔色に似合わない笑顔を見れば一目瞭然だ。


「無理するなよ」


心配そうにフランを見て、二人はラルファに連れられ、現場へと向かうことにした。

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