5つ目の事件

「三つ目の事件は三月に入ってからの事だった。犬などの動物を虐待していた男が銃殺」


三月一日。動物虐待を趣味としていた男が虐待していた犬の小屋に入れられた状態で発見。


この死体もまた、心臓を撃ち抜かれていた。それと、彼が動物たちの目をくりぬいていたからか、目にも弾丸を二つ埋め込まれていた。


そして、犬小屋の屋根に、残されていた血文字。もちろん害虫駆除と。


「……」


フランが徐々に無口になっていく。恐らく、想像しただけで気持ちが悪くなっているのだろう。


「この辺りから、俺達も同一犯による連続殺人事件への捜査へと踏み切った」

「まぁ、こうも同じような事件が続くと……」


あと二つ、今日まで事件が起きている。害虫駆除と称した私刑が。


「四つ目の事件は三月四日。小売店などで窃盗を働いた男が銃殺される」


窃盗犯。つまりは泥棒だ。今度は盗みをした罪で殺されている奴が居る。

自宅にて銃殺。盗んだものを、傷口に埋め込まれるようにして殺されていた。


「ここまで死因は全て銃殺か……これも立派な共通点じゃないのか?」


害虫駆除の連続殺人の共通点は血文字と被害者。そこに銃殺が入らないのは何故?

リュクレーヌはラルファに聞く。


「まぁ、話は最後まで聞くんだな。五つ目の事件。これが昨日起きた。小学校にて五人の子供が殺される」


この街の小学校の教室にて、起きた五つ目の事件。今まで1人ずつしか殺されてこなかったのに、今回は五人と多い。


「被害者の名前は、ランサ、エペ、オッハ、ボム、ラウエルだ」


大体、被害者が子供というのはどういう事だ。


「子供?事件の被害者は罪人では?」

「この子供たちはいじめの加害者だったんだ」


学校というのは社会の縮図。自分よりも立場や力の弱いものをねじ伏せる習性が、顕著に出ていたのだろう。

子供ならば尚更、動物らしい醜い行為が教室内で蔓延っていた。


被害者はいじめを行っていた。その罪に対する刑が、害虫駆除として執行されたのだろう。


「ただ……一人を除いて」

「一人?」


妙な引っかかりがある声でラルファは言った。リュクレーヌは聞き返す。

五人のうち一人はいじめの加害者ではない。だとしたら加害者ではない一人は一体何者なのだろう。


「その一人……ラウエルは……いじめの被害者だった」

「そんな……」


罪人とされていたいじめっ子だけではなく、いじめの被害者まで犠牲になっている。

巻き込まれたのか?いや、そうとは考えにくい。

これまで一貫して罪人を裁いていた犯人だ。その様なミスを犯すか?


名探偵と言えど、これには頭を抱える。

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