連続殺人事件と共通点

「まず、この連続殺人事件は、同一犯による五つの殺人事件だと考えられる」


五回の連続殺人。

どれもこの近辺で起きているという事らしい。


しかし、同一犯だという根拠は?偶然この辺りで殺人事件が連続で起きているだけではないのか。


いきなり疑問に直面した。


「どうして同一犯だと?」

「共通点が二つあるんだ。一つは被害者が全て何かしらの罪を犯した罪人である事」


殺人事件の被害者は罪人。何かしらの悪事を働いた者であった。

だとしたら、私刑のつもりだろうか。誰かが正義を振りかざし、罪人を自ら裁いているのか。


「もう一つは……現場に共通の血文字が残されているという事」

「血文字?」


もう一つの共通点。ある意味こちらの方が同一犯だと匂わせる証拠として相応しいかもしれない。

現場に必ず残される血文字。同じ筆跡で。


「あぁ、書いてあるんだよ。Pest Control……害虫駆除、と」

「害虫……駆除」


現場の血文字が意味することを考えるのは容易い。

被害者の罪人たちを害虫として、駆除、つまり始末したというだけのつもりなのだろう。


悪趣味だ。いくら被害者が罪人であろうと。リュクレーヌは眉間に皺を寄せる。


「続けるぞ」

「あ、はい。どうぞ」


不愉快そうなリュクレーヌの態度に気を遣いつつ、ラルファは事件の概要を話す。


「最初の事件が起きたのは二月二十日の未明。強盗殺人事件の犯人が拳銃で胸を撃たれて、死亡していた。そして、地面に血文字が……」


最初に害虫と称され駆除された罪人は強盗殺人犯だった。しかし、それ程に重い罪を背負った者がふらふらとこの街を出歩けるものなのだろうか?


「強盗殺人なら刑務所にいたんじゃ?」

「結構前の事件だからな。つい先日出所した身だったんだよ」


なるほど、法律で裁いた後の罪人だったのか。

害虫と称されている時点で、世間というクリーンな空間に放たれている不届き者という事だろう。


というよりも、罪人が世に放たれる程に物騒な街になっていたというのに、今日まで依頼が一軒もなかったことの方が、リュクレーヌにとって不思議で仕方がなかった。


「二つ目の事件の被害者は性犯罪者だ。死亡推定時刻は二月二十五日深夜。こちらも拳銃で撃たれていた。左胸と……その、股間を」


この事件について追った捜査官曰く、性犯罪に遭った被害者は結婚を控えていて、世間体の都合で事実を隠し、泣き寝入りをしていたという。

訴えられもせず、のうのうと生きていた暴漢は銃で心臓と、己の凶器を撃たれたという。

フランも思わず「悪趣味……」と口に出してしまう。

「そして、害虫駆除……と残していたのか」

血文字は現場となった被害者の自宅のベッドに残された。真っ白なシーツの上にはハッキリと紅が映えていた。

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