犯人と死因

仕組みは、わかった。しかし、そんな大掛かりなことどうやって?

ラルファは口を開いた。


「しかし、照明なんてそんな高いところにどうやって……まさか、ゴンドラを?」

「いえ、ゴンドラは使ってないはずです。あのゴンドラは二人乗りですからね」


「じゃあどうやって首を仕掛けたんだ!」

「そうですねー、飛んだ……とか?」

「飛んだ!?この高さだぞ、死ぬぞ!」


舞台から天井までは十メートル弱。ゴンドラに乗った二人も怯えたほどだ。


「まぁ、人間は死にますね」

「……まさか!」


フランがハッと気づく。


「そうだよフラン。犯人はマスカだ」

「マスカぁ!?」


人外であるマスカならこれらの犯行は不可能ではない。


「えぇ、マスカはアマラの手でないと死なない人外ですから。だとしたら、他の事も説明がつくんです」

「他の事?」

「内部の人間しか知らないはずの場所にある死体に手をかけられた理由とか、劇場に侵入した方法とかですね」


劇場の施錠は厳重だった。

そして、死体があった物置は劇場の人間しか知らないはず。


「首を斬って舞台裏に仕掛けたマスカの魂は……」


ごくり、と唾を呑む者もいた。

今度こそ、誰もが知りたかった真犯人。

命を奪った人間ではなく、この騒動を作り上げたのは──


「フェステリアさん自身です!」

「はぁ!?」

「いやね、僕たちもフェステリアさんが誰かに殺されて、その犯人に乗り移られちゃう!って、思ってたんですよ」


当初の見解では何者かがフェステリアを殺害し、憑依を目論んでいたと考えていた。

しかし、肝心のフェステリアが自殺となると、彼女自身が誰かに憑依した。

そう考える方が自然だ。


「自殺したフェステリアさんは何者かに憑依してこれらの犯行を自作自演した……これなら納得がいくんです」

「憑依……?」

「マスカは、他人の魂に乗り移って完成するものですからね」

「馬鹿馬鹿しい、それは都市伝説だろ」


ラルファは鼻で笑う。その様子にフランは少しだけ不機嫌になる。


「あの都市伝説は……事実なんです。だけど、公に出来ない。だからこうやって刑事さんと僕たちだけで話して、他の人にきこえないようにしているんです」

「ふん、では仮に、都市伝説が本当だとしての続きを聞こうか」


「ありがとうございます。あの物置も、フェステリアさんは知っていた。彼女があそこで自殺したのなら、彼女の魂はそれを覚えているはずです」

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