期間限定、氷のトリック
「フェステリアを殺した犯人が分かったと聞いたが?」
ステージ上にはリュクレーヌとフラン、ブラーチ、ラルファの四人が居る。
マスカが転生する都市伝説の真実は極秘。その約束を守るため、この事件の隠さなければならない真相は出来るだけ少人数に伝えるしかなかった。
「教えてもらおうか、犯人は誰だ?」
ラルファは腕組をして厳かな表情を見せる。
「あ、フェステリアさんを殺した犯人はフェステリアさん自身です」
対照的にリュクレーヌは軽くあしらうかの様に、自殺の事を告げた。
「は?」
「つまり、自殺です」
「……はぁぁぁぁ!?」
驚くラルファに、ブラーチが冷静に死因を告げようとする。
「死因は首つり。現場にあったロープで……」
殺人事件が自殺だった。その衝撃は大きすぎた。刑事や歌手、ファンにスタッフまで詰め寄る。
「冗談じゃない!今までの捜査はなんだったんだ!誰が首を斬ったんだ!凶器のナイフは何だったんだ!」
フェステリアが自殺としたら、解明されていない謎が多い。フェステリアの死後、だれが殺人のように偽装したのか。
「そう、それなんです」
今回の事件の1番の謎である。
「フェステリアさん自身は自殺だった。しかし、死体は何者かに首を斬られ、胸をナイフで刺されていました」
「誰がそんな事を……」
「まぁそれはトリックを明かしてからにしましょう」
何者かによって仕掛けられた事件。
誰が行ったのかではなく、どうやって行われたのかを解明することにした。
「まず、舞台から首が落ちてきた謎。これは期間限定のトリックです」
「期間限定?」
フランが首を傾げる。
「アリアさんの証言では、舞台上で雨漏りがしていたそうです」
「それは、こちらの捜査でも調べた」
「雨漏りの方向は照明でまぶしくて見えなかったと」
「そうだ」
舞台上の雨漏りを目撃したアリアの証言。普段と違う事だから何かしらの手掛かりかもしれないとラルファも調べていた。
結論にはたどり着かなったが。
「あれは、雨漏りなんかじゃありません。氷が解けていただけなのです」
「氷?」
「はい。犯人は、フェステリアさんの首を斬ったあと、雪に生首を包んだ」
犯人は、生首入りの雪玉を作った。おにぎりでいうところの米が雪具が首──と言ったとこだろう。
「そして、それを舞台照明の傍に仕込んでいた。舞台照明に灯りが点けばその熱で雪は解ける……そして、生首だけがぽとりと落ちたわけです」
ガス灯でできた照明の熱で、氷は溶けるが首は解けない。残った首だけが舞台に落ちたのだ。
「だから、氷漬けにされていた首と胴体の間に死後硬直の時差……死亡推定時刻のズレが出た。それなら説明がつくよな、ブラーチ」
「あぁ、首の死亡推定時刻の方が早かったからな。髪が濡れていたのもそういう事か」
氷で包まれた髪が濡れているのは当たり前だ。そして、温度の関係で死後硬直の時差が生まれるのは当然だった。
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