本当の死因と画家の証言
一方、現場では、ブラーチが捜査官と検死を続けていた。
「相変わらず、首……酷いな」
斬首されたフェステリアの首を眺めて顔を顰める。
「ただ、あのナイフでこの傷は無いですよね……斧か何かで斬ったような」
「現場にそれらしい凶器は?」
「全く見つかりません……」
「どうやって首を斬ったのか……ん?」
何かに気づく。首元に付着したもの、これは──
「どうしました?」
「この首の傷……何か繊維みたいなものが混ざっている」
針のように細い、枯れた植物が傷口に刺さっている。
「本当だ……何でしょう?」
植物。それらしいものがこの空間にあるだろうか。
あった。
古びた大繩が。
「麻……か?もしかして!あのロープの!」
「という事は……」
縄が首に食い込んでいた可能性がある。
「死因が絞殺かもしれない。調べるぞ!」
「はい!」
◆
ドクトルの家に向かう道中。
リュクレーヌはフランに一つ頼みごとをした。
「フラン、ドクトルの家に着いたら、俺が聞き込みをしている間、家の散策を頼む」
「……わかった。怪しいものがあったら調べるよ」
ドクトルが生きているとはいえ、聞き込みには行く。
手掛かりは徹底的に探りたい。
紙に書かれた住所に着いた。
リュクレーヌはドアをノックする。
「なんでしょう?」
小太りに髭の男が出てきた。服には絵の具が付いている。
きっとこの男がドクトルだろう。
「ドクトルさん。フェステリアさんの事件の件でききたいことがあります」
「警察ですか?」
「いえ、名探偵です」
「お引き取りください……」
「犯人を見つけるために貴方のお話が聞きたいんです!」
後ろからフランが強く言う。
「貴方なら、フェステリアさんの事を一番理解していると思うのです」
「……どうぞ」
一番、という言葉に負けたのか、彼はおずおずとした様子でドアを開けて二人を招いた。
「あっ……すいません、ちょっとトイレ」
フランはトイレに行くという。
勿論、これは作戦だ。トイレに行くと見せかけて、部屋の散策を行う。
紳士的なやり方では無いが、いたしかたない。
リュクレーヌは居間に招かれる。
何か、変わったもの……は無いか。
ただ、壁に大量の画びょうがあるが、画家の彼ならば普通かもしれない。
「すいません。うちの助手が」
「いえいえ。それで、お話というのは?」
「あぁ、フェステリアさんの事件で何か心当たりがあったりしないかなと」
フェステリアという名前を聞くと、悲しげな顔をしてドクトルは俯いた。
「僕もただのファンですから……劇場内部の事は分かりません」
「内部の犯行だとお考えで?」
「彼女……他の歌手にいじめられていたから」
「なるほど」
まさか、歌手の内部事情まで知っているとは。
「そういえばチョコをもらったとかいうのは」
「あぁ、みんなに配っていたんですけどね。僕だけ特別に食べさせて頂きました。美味しかったなぁ」
「……分かりました。ありがとう」
結局、新たな情報は手に入らなかった。
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