もう一つの雨漏り

「え?犯人捕まった?」

「うん……」


残された二人は、ぽかんとした。

まさか、こんなにあっけなく事件が幕を下ろすなんて。


「あの!」


幕を下ろしたのも束の間、背後から透明感のある声がした。


「ん?誰」


振り向くと、そこにいたのは先ほどまでのシッフルほどの派手さは無い女性。

劇場のスタッフだろうか?と彼女の方をリュクレーヌはじっと見る。


「あ、私……アリアっていいます。歌手の」

「あぁ、歌手の方でしたか」


新人の歌手らしい。アリアは「えっと……」と何かを伝えたいらしい。


「フェステリアさんの事件について調べているんですよね?」

「えぇ、何か知っていることはありますか?」

「もしかしたら……ファンの方が怪しいかもしれません」

「ファン?」


フェステリアのファンか?チョコレートを貰ったという。

ファンサービスが酷いなら恨みを買う事も有りそうだが……。


「フェステリアさんのファンってすごく過激なので……殺したいほど好き、みたいなこと……ありそうかと……」

「なるほど」

「ファンの人達、明日あたり、お花を手向けに来ると思います。」


フェステリアの死を知ったファンたちはきっと劇場に来るはずだ。彼女を悼むために。


「分かった。聞き込みをしてみます。ありがとう」


アリアの助言のおかげで、明日の聞き込みの予定は決まった。

それと……ちょうどいい。彼女にも何か聞いてみるか。


「そうだ、他に変わったことはありますか?」

「他に……そうですね、今日は雨漏りが酷くて」

「あぁ、舞台裏のですか?」


支配人とソワレの言っていた舞台裏の雨漏りだろうと思った。

しかし、アリアは首を振る。


「いえ、舞台の上です。演技中に雨漏りが…‥」


アリアの言う雨漏りは表舞台に垂れていたものだった。


「舞台?どこから漏れていたんだ」


舞台裏のものと違うのか?だとしたらどこからだろう?

先ほど現場を見た時舞台裏以外に穴が開いているようには見えなかった。

建物だって比較的新しい。出所が不明だ。


「私も見ようとしたのですが、照明が眩しくて」


アリア自身も探した雨漏りの正体は照明に阻まれた。


「なるほど……ありがとう」


情報としては十分か。リュクレーヌとフランは聞き込みを終了し、探偵事務所でブラーチたちと落ち合うことにした。

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