No.2オペラ歌手の証言

「はぁ?フェステリアについて?」

「そう、聞かせてください」


一方、リュクレーヌたちは楽屋の方まで足を運び、歌手達に聞き込みをしていた。

目の前で面倒だと言うような顔をして二人を見ているのはシッフルという歌手。

彼女はフェステリアに次ぐ人気歌手だ。


「私、あの子嫌いなのよね……自分の事しか考えてない」

「それであって当たりがキツイのよねー」


その横から出てきた取り巻きの歌手も同調する。


「おぉ……これは、ひどい嫌われぶり」

「やっぱり支配人の言ってた通りだね」


やはり、ガルディアンの言う通り、歌手たちはフェステリアの事をよく思っていなかった。


「自己顕示欲高いのよね。私の歌を聴け!ってかんじ」

「そうそう!ファンへのサービス過剰なのも、自分が愛されてる!みたいなの感じたいんでしょ?」

「絶対そうよ!この間もチョコ配りイベント?あー、そういうの私、本当に無理。」


イベント?劇場が独自でやっているものだろうか?


「チョコ配り?」


リュクレーヌは疑問に思い聞いた。


「えぇ、ファンにチョコあげる……みたいな事してたのよ。勝手にそういうのしないでほしいわ!」


バレンタイン時期だからとチョコレートをファンに配っていたらしい。それも、独自の判断で。

劇場内部の人間にはキツイ当たりだが、ファンサービスは神対応ときたものだ。


「この間も打ち上げに来なかったし……まぁ、来なくていいけど」

「ほう、それはいつの事ですか?」

「四日前……かしら?」

「オフの日にやったよね」


前日に大きな公演を終えて、劇場が休みであった日に打ち上げパーティーを開いたという。

そのパーティーにフェステリアは来なかった。


「そうそう……あー、死んでせいせいした!」

「ははっ、ちょっと言い過ぎー」


ただの愚痴大会になってしまった。それにしても酷い言い草だが。

そんな中、恐る恐るフランは訊いてみた。


「あの……フェステリアさんになりたいと思った事とかって」

「はぁ!?ある訳ないでしょ!何言ってるのよ!」


当然否定。当たり前だが。フランは「ひっ!」と声を漏らした。

すると、楽屋へ通じる廊下から誰かが近づいてくる。

あぁ、刑事のラルファだ。


「シッフル・パトレイナさん、ちょっとよろしいでしょうか」

「私?何よ」


どうやらラルファはシッフルに用があるらしい。彼らも聞き込みだろうか。


「フェステリアさん殺害の容疑でお話を伺いたいのですが」

「そんな!知らないわよ!」


殺人容疑?もしかして容疑者?

さっきまで横で悪口を言い合っていた取り巻きも「シッフルが!?」と驚く。


「現場でフェステリアさんに刺さっていたナイフが貴方のものだったのです」

「はぁ!?そのナイフ……護身用に持っていたもの!二日前に無くしたのよ!」


人気歌手だからか、護身用に武器を持っていることもあるのか。

まさか自身を護るためのナイフが命取りになるなんて。


「お話は署で聞きます」


シッフルはラルファに連れられてその場を離れた。

取り巻きも、居心地が悪いのか、どこかへ行ってしまう。

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