二つの死亡推定時刻
捜査官の一人が大きな足音で倉庫に駆け込んだ。
「凶器の持ち主が分かりました!」
思い切り開かれたドアから発せられたのは吉報だった。
「ご苦労。それで……こちらは」
こちらとは検死をしているブラーチの方。
ラルファに気づいて、現状報告をする。
「あぁ、死亡推定時刻だが……死後硬直などから……四日前だな。二月十四日の深夜」
「ふむ、それでは四日前に刺されて亡くなったと」
「ただ、それは胴体の死亡推定時刻だ」
「どういう事ですか?」
「首の死体の死亡推定時刻は二日前なんだ。」
「なっ……そんなこと!」
刑事は驚いた。首と胴体の死亡推定時刻が二日も違う。
状況が分からないクレアは問う。
「胴体が四日前に死んで、首が二日前に死んだって事?」
「そんなわけがあるか」
あっさり否定された。首と胴体が二日違いで死ぬなんて事あってたまるか。
考えられる原因は一つ。どちらかが本当で、どちらかが偽物だ。
「どちらが本当の死亡推定時刻かもっと調べる必要がある。」
刑事は、聞きづらそうに「それで、死因は」と問う。
「それはもう少し待ってくれ。一筋縄ではいかなさそうだ」
「どうして?」
ブラーチは、死体の胸元の傷を指さした。
「胸のナイフが心臓までギリギリ達していないんだよ。もしかしたら、死因が別にあるのかもしれない」
ナイフの傷は浅く、心臓まで足らない。
「別?」
もし、別に死因があるとすれば。
「首だ」
無残に割かれた首と胴。そこに死因が隠されている。ブラーチはそう考えた。
「真二つにされているが、本当はそこに致命傷があった可能性がある」
「本当の死因を隠すために首を切った可能性があるって事ね」
「取り憑いてマスカになれば、どのみち傷口はふさがって元通りだからな」
フェステリアのマスカになれば、首の傷などなかったことになる。
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