ゴンドラと天井の穴

遙か高くまで昂る。「もうこの辺でよくないですか?」とフランは震える声で言った。

それでも、まだまだ天井までは遠い。穴を調べるには、もう少しだけ上昇する必要があった。


「あー待って待って!無理ー!」

「揺らさないでよ!リュクレーヌ!」


リュクレーヌが叫ぶ。大声による振動がゴンドラにも伝わり揺れた。


「危ないので大人しくしていてくださーい!」


舞台裏から、ソワレは注意喚起をする。

もう少しだけ。ゴンドラが上昇すると、ようやく、天井の付近まで到達した。


「あぁ……やっと着いた」

「近くで見ると結構でかい穴だな」

「たしかに……人一人通れそうな……」


遠くからだと見えなかった穴も思ったよりも大きい。穴を塞いでいる雪から、時折、ぽつんと、滴が垂れる。


「雨漏りは雪のせいだな」


雪解け水が雨漏りとなっていたのだろう。


ゴンドラはゆっくりと下降する。下を見ちゃだめだ。

二人は離れ行く天井を眺めながら、舞台裏へと戻ってきた。


「ふう……怖かった」


まだ足の感覚がふわふわする。フランは冷や汗を拭う。


「なんだ、全然怖くなかったな」


リュクレーヌは腕を組みながら頷く。一方、フランは冷ややかな視線。


「リュクレーヌ、足震えているよ」


足元を見ながら、指摘した。

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