劇場スタッフの証言

「部外者が舞台裏とかに来ることってできます?」

「公演中でも見張りが居るので無理だと思いますよ。閉館後は厳重に施錠していますし……」


だとすれば、犯人は身内の可能性が高い。


「では、何か変わった事はありませんか?」

「変わった事?そうですね……あ、そういえばスタッフが……おーい!ソワレ君」


支配人は舞台裏にいる人影に声を掛ける。

それに気づいてか、人影は舞台上の3人の方に近づいた。支配人の方に向かってすぐに元気よく返事をする。


「はい!何でしょう」


ソワレと呼ばれた若い男性はスタッフの1人らしい。

ちょうどリュクレーヌとフランの間くらいの年齢だろうか。


「今日、ステージの整備中何か言っていなかったっけ?」

「あぁ!屋根のことですね!」

「屋根?」

「えぇ、雨漏りが起きて、屋根を見たら穴が開いていたんです」


今朝、支配人は舞台裏の雨漏りに気づいた。

それをソワレに訴えかけたところ、比較的新しいこの建物で雨漏りなんて珍しい。そう思ったソワレは屋根を点検したらしい。


「穴?それはいつから?」

「多分今日じゃないでしょうか?昨日までは雨漏りしたりしなかったし……」

「それ、見せてもらう事できます?」

「えぇ、構いませんが……大丈夫ですか、あの高さですよ?」


ホールの天井は家とはくらべものにならなくいくらい、高い。暗いせいもあって、ここからでは穴の確認などできない。屋根の穴を調べるには、天井の近くまで行くしかなかった。


「うわ……」

「無理……」

「どうします?」


顔を青くした二人にソワレは問う。

天井の近くまで行く手段はただ一つ。掃除用のゴンドラを使うしかない。

高所恐怖症であれば、考えたくもないだろう。


「うーん、これも捜査のためだ。よし!行くぞ!」


腹を括ったらしい。と、見せかけて「おっ!」と言った、フランの肩を叩く


「助手が!」

「ちょっと!!」


急な無茶ぶりにフランは声を荒げた。

しかし、リュクレーヌはソワレから絶望的な情報を聞く事になる。


「あの、このゴンドラ二人乗りなんです」

「はぁ!?なんで!」

「一人で乗るとバランス取れなくて大変危険なので……」


なるほど、通りで一人で乗るには大きいと思った。


「つ……つまり、俺も乗らなきゃいけない?」


リュクレーヌは震える声で訊く。ソワレはこくりと頷く。


「ほら、行くよ。リュクレーヌ」


そして、フランの方がよっぽど腹を括っていた。

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