現場検証

胸には、金色の果物ナイフのようなものが刺さっている。


「心臓に、ナイフを一突き……か」

「うぅ……」


首から大量の血が流れている。先ほどの生首の時もであったが、フランは随分と苦い表情。

その様子をクレアは心配した。


「フラン、大丈夫?」

「う、うん……平気……」


フランをよそに、ブラーチとリュクレーヌは死体を眺める。


「こっちの死体は濡れていないな」


先ほどの濡れていた髪の毛。それに対して胴体の方が着ている衣服などは濡れていない。

血は付着しているが乾いている。


「まずは死因を割り出さないとな……」

「え?心臓を刺されたからじゃないの?」


フランが問う。すると、ブラーチが答えた。


「そう見えるが、本当にそうか調べるんだ。あと、死亡推定時刻もな」

「あとは、この凶器については警察に調べてもらうとして……」


凶器のナイフ。これを使ってフェステリアを殺したのは──


「犯人……フェステリアに転生しそうな人物か……聞き込みしてみるか」

「あぁ、早めにたのむ。この死体にマスカが取り憑くかもしれない」


犯人がフェステリアに取り憑く事が目的ならばうかうかしていられない。

一刻も早く、事件を解決しなければ。


「と、言うことで良い子達、聞き込みに行くぞ」

「うん……」


よい子たち、と、フランとクレアに言う。

フランは聞き込みに行く気だ。一刻もこの場を離れられるのならば……と思っているのだろう。


しかし、クレアは


「私はここに残るわ」


と、現場検証を続ける事を望んだ。


リュクレーヌには彼女が現場に残ろうとした理由がすぐに分かった。


「だってさ、ブラーチ」


ブラーチの方を見て悪戯っぽくニヤニヤと笑う。

しかし、ブラーチにその意図は分からないまま、「気色悪いな」と怪訝な顔をする。


「ほら、フラン。俺達は聞き込みだ。行くぞー」


グロッキー状態のフランを引きずり、リュクレーヌは倉庫から出ようとした。


「ふぁい」


フランは気のない返事をする。


二人は現場を後にした。


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